2010年12月31日金曜日

六吟歌仙・折鶴の巻

掲示板で巻いていた今年12巻目の連句が連衆の皆さんのお力により予告通り年内満尾。


六吟歌仙・折鶴の巻

   折鶴と星と触れ合ふ聖樹かな     ぽぽな
    手順どほりに点すストーブ     ゆかり
   童顔の国たつ汽車を待ちわびて     ぐみ
    県境の山越える草の実         恵
   万華鏡みれば無数の三日月       銀河
    眼帯のまま利酒に行き         篠
ウ  ハスキーな声で相槌うつ女        な
    セーターといふ青き山なみ       り
   片恋の北の宿にも春来たり        み
    光零るる海女の足元          恵
   むつくりとこは驚きの蜃楼        河
    スフィンクスから謎をかけられ     篠
   英雄は罪人となり夏の月         な
    あれぐろばるばろがりれおがりれい   り
   ベーコンと金平糖を買ひ忘れ       み
    卒業の朝五分刈りにする        恵
   花時の窓にペルシャの涙壺        篠
    子猫たずねるポスターの辻       河
ナオ 聞き覚えある声のして目が覚めて     篠
    外出前と帰宅直後と          河
   ぢかに口つけてミルクの紙パック     恵
    ひとり暮らしの名は悟空なり      み
   不如意にて伸び放題のものばかり     り
    アフロディーテの髪に潮風       な
   悪といふこと知らざるがパラダイス    河
    酸いも甘いもうたかたの日々      篠
   コスモスを渡され触るる指の先      恵
    色鳥あまた電気みなぎり        り
   親と子と寄り添ひて行く十三夜      み
    記憶の糸をやさしく手繰る       な
ナウ 雪降つて人形の目のあをあをと      篠
    アツカンがよくハシも器用に      河
   忍術のたしなみもなく歳かさね      り
    亀の甲羅の濡れて春めく        み
   花の雲こはさぬやうに息をして      恵
    西に東に光りゆく風          な

起首:2010年12月25日(土)04時50分17秒
満尾:2010年12月31日(金)23時06分1秒
捌き:ゆかり

2010年12月18日土曜日

四吟歌仙 目覚めればの巻

掲示板で巻いていた連句が満尾。


四吟歌仙 目覚めればの巻

   目覚めればとんと冬めく水辺かな     ぽぽな
    白き息吐き波立つ川面         ゆかり
   かさばれるメシエカタログ広げ見て  ざんくろー
    知らない国の切手をはがす       のかぜ
   執事しか入れぬ部屋の窓に月         な
    紅茶美味しき夜長始まる          り
ウ  八朔にくちびる寄せてよく分かる       ー
    預ける背に蜜語の響き           ぜ
   明日からはもう先生と呼べません       な
    石膏像の白目おそろし           り
   現実の浸食される火山灰           ー
    すべなく過ぎる夏の語らひ         ぜ
   地球儀にポツダムの位置確かめて       な
    西瓜番にも抑止力あり           り
   強情の静まり返る秋の沼           ー
    あかね蜻蛉の離散集約           ぜ
   幾千の花の莟は夢想する           な
    野良にもなれず望む鳥の巣         り
ナオ 諸葛菜教への窓辺後にして          ぜ
    へべれけとなり次ののれんへ        ー
   海老蔵が来たので誰もゐなくなる       り
    丑三つ時の闇はいたづら          な
   朔月に嘯くガレのひとよ茸          ぜ
    いかれた白い象の導き           ー
   カラー版江口寿史のポーズ集         り
    また使ひ方間違へてゐる          な
   頬被り今はレゲエのニット帽         ぜ
    おいらん淵で腰をくねくね         ー
   仙人は月から落ちて火の玉に         り
    見ないふりしてもろこし齧る        な
ナウ 左手馬手野分荒ぶる夢のあと         ぜ
    日米安保の傘を開きて           ー
   三猿のやうなこと言ふ片時雨         り
    付き合ひの良き新入社員          な
   歯車の回り始める花筵            ー
    ピッチカートで弾く春の野         ぜ

起首:2010年11月18日(木)
満尾:2010年12月18日(土)
捌き:ゆかり

2010年12月3日金曜日

六吟歌仙 さながらにの巻

掲示板で巻いていた連句が満尾。

六吟歌仙 さながらにの巻

   さながらに落ちゆく鮎のながめかな  ざんくろー
    崩れ簗には億のたましひ        ゆかり
   有明の月に福助頭を下げて         痾窮
    ふつと目をやる鏡台のうへ         七
   ぷるぷるとサプリメントの効き目あり    銀河
    冷蔵庫から琥珀のゼリー         苑を
ウ  真鶴のつがふ到達不能極           ー
    二億六千年前の海             り
   頂上に化石見つけるパリサイ人        窮
    バベルの塔を登り続けて          七
   タラの芽をまづ撮つてから御飯ですよ     河
    シャガール色に染まるきさらぎ       を
   淡月の幽かな記憶届けられ          ー
    ひたと寄り添ふ送り狼           り
   玄関に熊の親父の懐手            窮
    山姥の呼ぶ声木霊して           七
   長月のここ豪州に三分咲き          河
    珍種の虫に生まれ変はりぬ         を
ナオ ゆふぐれの危険を灯し烏瓜          り
    足早になる呪文を唱ふ           ー
   ハンプティダンプティどこここはだれ     七
    真夜のお城の長ききざはし         窮
   国道を北へ向かつてひた走る         を
    凍土のゆるむ日も来たりなん        河
   東郷といふ麦酒にて乾杯し          り
    幸と不幸を満たす撃鉄           ー
   島々の棚田を染める秋夕焼          七
    蛤となる雀をかしき            窮
   猫の目に波にただよふ月を見る        七
    毒とおもふな石見銀山           河
ナウ 語り部の背から雪の降りはじむ        を
    赤いショールと乙女の因果         ー
   占ひのテレビを消して家を出る        り
    つちふる中をざわめく鴉          窮
   夜の花の近づくほどに遠のきて        を
    元気をもらふ丘のはるかぜ         河

起首:2010年11月 3日(水)18時27分51秒
満尾:2010年12月 3日(金)07時13分55秒
捌き:ゆかり