2014年12月29日月曜日

七吟歌仙・短日の巻

掲示板で巻いていた連句が満尾。

   短日の坂の終りのポストかな      篠
    人に生まれてしのぐ底冷     ゆかり
   港町ならばリバプールを思ひ     苑を
    颱風過ぎて空は碧に        一実
   山の端の影を濃くして月昇る   まにょん
    墨も香りて襖絵の菊        ぐみ
ウ  笛の音のひたとやみたる大伽藍    なむ
    指でたどれば禁断の喉        篠
   一匹の蛇より千匹の蚯蚓        り
    テンペラ用に卵を割つて       を
   朝食をとるに珈琲ふたつ淹れ      実
    木々に群れなす熱帯の鳥       ん
   飛ぶ日まで翼のタトウ背に秘め     み
    サン・クエンティン刑務所を出る   む
   古着屋が助つ人で来る草野球      篠
    こんなところに純粋階段       り
   奥山に花散る湖のあるといふ      を
    箱に溢れて子猫四五匹        実
ナオ 朧夜に三益愛子が辻で待つ       ん
    婆さましやばしやば行水好きで    み
   浴びるほど呑むため担ぐ荒神輿     む
    パズルで過ごす反省の日々      篠
   縦横に五音七音埋め込んで       り
    千早振るとか聴くYouTube       を
   ショッピングモールに髭を剃られては  実
    鞄のなかの鞭と蠟燭         ん
   付け馬も誕生日とてごまかされ     み
    ピザを買ひきて妻と親しむ      む
   満月を見上げ五右衛門風呂のなか    篠
    浮き沈みある人生の秋        り
ナウ 密漁のさなかに濃霧注意報       を
    電子レンジにまはる炒飯       実
   伽羅の香のしづかにありて旅の果    ん
    淡きいろどり名残の雪に       み
   渋谷区の神南あたり花は咲く      む
    待ち人の来て陽炎の午後       篠

起首:2014年12月16日(火)
満尾:2014年12月29日(月)
捌き:ゆかり

2014年12月13日土曜日

七吟歌仙・室咲の巻 満尾

掲示板で巻いていた連句が満尾。 

   室咲や少年の弾くアルペヂオ     苑を
    おがくづ飛ばす御歳暮の海老   ゆかり
   渡り行く異形の群れは哀しくて    月犬
    子羊なべて迷ふものらし       七
   どの波もしづかに眠り月に海     ぐみ
    芋浮かべたるスープの濁り    てふこ
ウ  行く秋のトライアングルイヤリング  銀河
    甘噛みといふ大人の遊び       を
   襟を立て寒さの所為にしてみたり    り
    よごとよごとに匂ひたつ衣      犬
   ベランダにリボンの騎士はマント干し  七
    高下駄はいて歌ふデカンショ     み
   枕投げしたる一個は宇宙へと      こ
    ホテル暮らしも京都東京       河
   啓蟄の女子マラソンの新記録      を
    涅槃西風より迅き仕事師       り
   蒼穹へ花押し上げる枝と幹       犬
    耳鼻科眼科とせはしく通ひ      七
ナオ 故郷のふくろふの声まねてみる     み
    乳母の娘と日向ぼこして       こ
   開戦となむわがことと思はずも     河
    ラヂオは波の音するばかり      を
   夜店ほど明るく点せ真空管       り
    昇りてゆらぐ蚊遣のけむり      犬
   七つ星北へ北へとひた走る       七
    知る人ぞ知る地球儀の裏       み
   茱萸の実を食べて流浪の民のふり    こ
    サナトリウムに稲妻の落つ      河
   ひたひたと満月の夜をなにか来る    を
    姫茴香で作る銃弾          り
ナウ モティといふ名前の店に憶えあり    犬
    雪降る庭に犬駆け回り        七
   初てふの色は今年も白ならむ      み
    ほくろの数に亀の鳴きをり      こ
   逆光に透いて散りぬる花の丘      河
    雲雀のやうにはしやぐお茶会     を


起首:2014年11月23日(日)
満尾:2014年12月13日(土)
捌き:ゆかり