掲示板で巻いていた連句が満尾。
短日の坂の終りのポストかな 篠
人に生まれてしのぐ底冷 ゆかり
港町ならばリバプールを思ひ 苑を
颱風過ぎて空は碧に 一実
山の端の影を濃くして月昇る まにょん
墨も香りて襖絵の菊 ぐみ
ウ 笛の音のひたとやみたる大伽藍 なむ
指でたどれば禁断の喉 篠
一匹の蛇より千匹の蚯蚓 り
テンペラ用に卵を割つて を
朝食をとるに珈琲ふたつ淹れ 実
木々に群れなす熱帯の鳥 ん
飛ぶ日まで翼のタトウ背に秘め み
サン・クエンティン刑務所を出る む
古着屋が助つ人で来る草野球 篠
こんなところに純粋階段 り
奥山に花散る湖のあるといふ を
箱に溢れて子猫四五匹 実
ナオ 朧夜に三益愛子が辻で待つ ん
婆さましやばしやば行水好きで み
浴びるほど呑むため担ぐ荒神輿 む
パズルで過ごす反省の日々 篠
縦横に五音七音埋め込んで り
千早振るとか聴くYouTube を
ショッピングモールに髭を剃られては 実
鞄のなかの鞭と蠟燭 ん
付け馬も誕生日とてごまかされ み
ピザを買ひきて妻と親しむ む
満月を見上げ五右衛門風呂のなか 篠
浮き沈みある人生の秋 り
ナウ 密漁のさなかに濃霧注意報 を
電子レンジにまはる炒飯 実
伽羅の香のしづかにありて旅の果 ん
淡きいろどり名残の雪に み
渋谷区の神南あたり花は咲く む
待ち人の来て陽炎の午後 篠
起首:2014年12月16日(火)
満尾:2014年12月29日(月)
捌き:ゆかり
2014年12月13日土曜日
七吟歌仙・室咲の巻 満尾
掲示板で巻いていた連句が満尾。
室咲や少年の弾くアルペヂオ 苑を
おがくづ飛ばす御歳暮の海老 ゆかり
渡り行く異形の群れは哀しくて 月犬
子羊なべて迷ふものらし 七
どの波もしづかに眠り月に海 ぐみ
芋浮かべたるスープの濁り てふこ
ウ 行く秋のトライアングルイヤリング 銀河
甘噛みといふ大人の遊び を
襟を立て寒さの所為にしてみたり り
よごとよごとに匂ひたつ衣 犬
ベランダにリボンの騎士はマント干し 七
高下駄はいて歌ふデカンショ み
枕投げしたる一個は宇宙へと こ
ホテル暮らしも京都東京 河
啓蟄の女子マラソンの新記録 を
涅槃西風より迅き仕事師 り
蒼穹へ花押し上げる枝と幹 犬
耳鼻科眼科とせはしく通ひ 七
ナオ 故郷のふくろふの声まねてみる み
乳母の娘と日向ぼこして こ
開戦となむわがことと思はずも 河
ラヂオは波の音するばかり を
夜店ほど明るく点せ真空管 り
昇りてゆらぐ蚊遣のけむり 犬
七つ星北へ北へとひた走る 七
知る人ぞ知る地球儀の裏 み
茱萸の実を食べて流浪の民のふり こ
サナトリウムに稲妻の落つ 河
ひたひたと満月の夜をなにか来る を
姫茴香で作る銃弾 り
ナウ モティといふ名前の店に憶えあり 犬
雪降る庭に犬駆け回り 七
初てふの色は今年も白ならむ み
ほくろの数に亀の鳴きをり こ
逆光に透いて散りぬる花の丘 河
雲雀のやうにはしやぐお茶会 を
起首:2014年11月23日(日)
満尾:2014年12月13日(土)
捌き:ゆかり
室咲や少年の弾くアルペヂオ 苑を
おがくづ飛ばす御歳暮の海老 ゆかり
渡り行く異形の群れは哀しくて 月犬
子羊なべて迷ふものらし 七
どの波もしづかに眠り月に海 ぐみ
芋浮かべたるスープの濁り てふこ
ウ 行く秋のトライアングルイヤリング 銀河
甘噛みといふ大人の遊び を
襟を立て寒さの所為にしてみたり り
よごとよごとに匂ひたつ衣 犬
ベランダにリボンの騎士はマント干し 七
高下駄はいて歌ふデカンショ み
枕投げしたる一個は宇宙へと こ
ホテル暮らしも京都東京 河
啓蟄の女子マラソンの新記録 を
涅槃西風より迅き仕事師 り
蒼穹へ花押し上げる枝と幹 犬
耳鼻科眼科とせはしく通ひ 七
ナオ 故郷のふくろふの声まねてみる み
乳母の娘と日向ぼこして こ
開戦となむわがことと思はずも 河
ラヂオは波の音するばかり を
夜店ほど明るく点せ真空管 り
昇りてゆらぐ蚊遣のけむり 犬
七つ星北へ北へとひた走る 七
知る人ぞ知る地球儀の裏 み
茱萸の実を食べて流浪の民のふり こ
サナトリウムに稲妻の落つ 河
ひたひたと満月の夜をなにか来る を
姫茴香で作る銃弾 り
ナウ モティといふ名前の店に憶えあり 犬
雪降る庭に犬駆け回り 七
初てふの色は今年も白ならむ み
ほくろの数に亀の鳴きをり こ
逆光に透いて散りぬる花の丘 河
雲雀のやうにはしやぐお茶会 を
起首:2014年11月23日(日)
満尾:2014年12月13日(土)
捌き:ゆかり
2014年11月18日火曜日
七吟歌仙・黒猫の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
黒猫に紅葉かつ散る窓辺かな まにょん
火を恋ふならばジュリアン・ソレル ゆかり
鯖雲に硝子の破片混らせて なな
波頭から夏の旋律 苑を
椰子の実の深き眠りに月涼し ぽぽな
いまやおしやれな亀の子束子 らくだ
ウ ふすまには万年床を隠す技 ぐみ
亞剌比亞文字のこれは恋文 ん
多理婆无母伊須良牟許久母夢乃橋 り
三面鏡で閉ざす日焼け子 な
真夏日にペンギン檻を脱走す を
蝋の翼はみるみる溶けて ぽ
人形はマダムに命吹きこまれ だ
或る晴れた日のオペラ上演 み
大いなる跳躍春の祭典の ん
古きレジ打つ彼岸の茶店 り
口笛は花の舟より聞こえきて な
はたいて落とす靴底の泥 を
ナオ 手袋と刃物どこにもみつからず ぽ
雪合戦のルールが変わる だ
精虫の勝者は今日も職さがし み
一応覗く屑籠の中 り
乱丁の夏のページがあるかもと な
西日に染まるレースのカーテン ん
目蒲線田園調布駅に雨 を
久しぶりねとはにかむ人よ ぽ
えのころでそろりとなでる足の裏 だ
ひとさはぎして雁の降り立つ み
月明は鏡の沼を眠らせず ん
NASAの素材のちくちくとして り
ナウ 人影と名残としての霜柱 な
湯気が薬缶の蓋持ち上げる を
振り向けば体の奥に鈴の音 ぽ
春一番を告げる予報士 だ
北上する開花前線と宅急便 み
母のほほゑむ日永の戸口 ん
起首:2014年10月29日(水)
満尾:2014年11月18日(火)
捌き:ゆかり
黒猫に紅葉かつ散る窓辺かな まにょん
火を恋ふならばジュリアン・ソレル ゆかり
鯖雲に硝子の破片混らせて なな
波頭から夏の旋律 苑を
椰子の実の深き眠りに月涼し ぽぽな
いまやおしやれな亀の子束子 らくだ
ウ ふすまには万年床を隠す技 ぐみ
亞剌比亞文字のこれは恋文 ん
多理婆无母伊須良牟許久母夢乃橋 り
三面鏡で閉ざす日焼け子 な
真夏日にペンギン檻を脱走す を
蝋の翼はみるみる溶けて ぽ
人形はマダムに命吹きこまれ だ
或る晴れた日のオペラ上演 み
大いなる跳躍春の祭典の ん
古きレジ打つ彼岸の茶店 り
口笛は花の舟より聞こえきて な
はたいて落とす靴底の泥 を
ナオ 手袋と刃物どこにもみつからず ぽ
雪合戦のルールが変わる だ
精虫の勝者は今日も職さがし み
一応覗く屑籠の中 り
乱丁の夏のページがあるかもと な
西日に染まるレースのカーテン ん
目蒲線田園調布駅に雨 を
久しぶりねとはにかむ人よ ぽ
えのころでそろりとなでる足の裏 だ
ひとさはぎして雁の降り立つ み
月明は鏡の沼を眠らせず ん
NASAの素材のちくちくとして り
ナウ 人影と名残としての霜柱 な
湯気が薬缶の蓋持ち上げる を
振り向けば体の奥に鈴の音 ぽ
春一番を告げる予報士 だ
北上する開花前線と宅急便 み
母のほほゑむ日永の戸口 ん
起首:2014年10月29日(水)
満尾:2014年11月18日(火)
捌き:ゆかり
2014年9月27日土曜日
七吟『赤毛のアン』歌仙 花野の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
花野ゆく馬車に赤毛の少女かな らくだ
約束のごと秋のゆふぐれ ゆかり
月の出に切妻屋根の静まりて ぐみ
はじめて貰ふギンガムの服 令
想像を詰めてふくらむバスケット 苑を
小舟流れて遠い海まで 河
ウ ロマンスの岸辺にいつか灯は点り 七
石盤割つて学校を去る だ
たちまちのうちに野心の地平線 り
決して飽きぬ虹の色合ひ み
礼拝の帽子に野薔薇かざりたる 令
負けず嫌ひの天使が墜ちて を
病む人にひたすらに射す冬の月 河
終はることなき林檎の並木 七
お茶会でお茶も飲まずに酔つ払ひ だ
毎週ひとつ物語書く り
紫の水晶ここよと花ひらり み
小径を抜けるあたたかな風 令
ナオ 振り向けば丘も農夫も陽炎へり を
夏のあひだを遊び呆けて 河
まぼろしはいつもかなはぬ夢を見せ 七
徹底的に髪を切られる だ
きつとよいものだと思ひ角曲がる り
ぐんぐん伸びる十五の背丈 み
代数に幾何ラテン語に英国史 令
本をひらけば九月の匂ひ を
身に入みてオートミールの煮加減も 河
金風わたりお喋りばかり 七
月明かり招く客用寝室へ だ
がうがう燃やし湧かす熱湯 り
ナウ くゆらせるパイプの煙と波長合ひ み
ちやうちん袖は白銀に映ゆ 令
からつぽの子供部屋てふ黄昏に を
遠く友の灯蝶々のごと 河
エルフィンとゴブリンもゐる花の森 七
恋人たちの小径うららか だ
起首:2014年 8月23日(土)14時20分43秒
満尾:2014年 9月27日(土)14時37分5秒
捌き:三島ゆかり
花野ゆく馬車に赤毛の少女かな らくだ
約束のごと秋のゆふぐれ ゆかり
月の出に切妻屋根の静まりて ぐみ
はじめて貰ふギンガムの服 令
想像を詰めてふくらむバスケット 苑を
小舟流れて遠い海まで 河
ウ ロマンスの岸辺にいつか灯は点り 七
石盤割つて学校を去る だ
たちまちのうちに野心の地平線 り
決して飽きぬ虹の色合ひ み
礼拝の帽子に野薔薇かざりたる 令
負けず嫌ひの天使が墜ちて を
病む人にひたすらに射す冬の月 河
終はることなき林檎の並木 七
お茶会でお茶も飲まずに酔つ払ひ だ
毎週ひとつ物語書く り
紫の水晶ここよと花ひらり み
小径を抜けるあたたかな風 令
ナオ 振り向けば丘も農夫も陽炎へり を
夏のあひだを遊び呆けて 河
まぼろしはいつもかなはぬ夢を見せ 七
徹底的に髪を切られる だ
きつとよいものだと思ひ角曲がる り
ぐんぐん伸びる十五の背丈 み
代数に幾何ラテン語に英国史 令
本をひらけば九月の匂ひ を
身に入みてオートミールの煮加減も 河
金風わたりお喋りばかり 七
月明かり招く客用寝室へ だ
がうがう燃やし湧かす熱湯 り
ナウ くゆらせるパイプの煙と波長合ひ み
ちやうちん袖は白銀に映ゆ 令
からつぽの子供部屋てふ黄昏に を
遠く友の灯蝶々のごと 河
エルフィンとゴブリンもゐる花の森 七
恋人たちの小径うららか だ
起首:2014年 8月23日(土)14時20分43秒
満尾:2014年 9月27日(土)14時37分5秒
捌き:三島ゆかり
2014年9月1日月曜日
七吟歌仙・日盛の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
日盛をわたる真白き機体かな ぽぽな
網引くやうに夏の物音 ゆかり
目覚めれば朝餉支度の母がゐて まにょん
摘まみてちぎるバジル三枚 玲奈
満月に小気味よきほどビルの影 銀河
馬肥ゆる地のあたりに及ぶ ぐみ
ウ 水澄んで行きつ戻りつ誰が声 七
逢ひにゆくことパパには内緒 な
神様とGPSがついてゐる り
スプートニクのライカは哀し ん
描きかけのカンバスに差す冬の月 奈
似てゐるやうで似てゐない眉 河
モスラには琵琶湖一気に呑み干され み
にはかに上がるBMI値 七
春寒の運動靴の紐むすぶ な
双子ころがる日永の堤 り
ふるさとを思へば遠き花の夜 ん
改修中のからくり時計 奈
ナオ こつこつと窓を敲いて小鳥来る 河
たゆまず励む綱取りの秋 み
懸賞に当たり新酒を酌み交はす 七
ロバートデニーロは左利き な
オーボエの調べに乗せる頭蓋骨 り
金毘羅宮の長き石段 ん
土踏まずまだ無き吾子に靴を買ふ 奈
ここでは犬が泳いでもいい 河
綱吉の墓をたづねる歴女たち み
明日は湯島のカルチャ-センタ- 七
月光のスマホの声はぎこちなく な
案山子に詰めるあをき脳味噌 り
ナウ 爽やかに気球は恋の唄を乗せ ん
君と暮らした街を横切る 奈
てのひらにはらりと受けるぼたん雪 河
運命線で入試うらなひ み
ぬかるみを歩めば花の開く音 七
夢もうつつも春のきらめき な
起首:2014年 7月26日(土)
満尾:2014年 9月 1日(月)
捌き:ゆかり
日盛をわたる真白き機体かな ぽぽな
網引くやうに夏の物音 ゆかり
目覚めれば朝餉支度の母がゐて まにょん
摘まみてちぎるバジル三枚 玲奈
満月に小気味よきほどビルの影 銀河
馬肥ゆる地のあたりに及ぶ ぐみ
ウ 水澄んで行きつ戻りつ誰が声 七
逢ひにゆくことパパには内緒 な
神様とGPSがついてゐる り
スプートニクのライカは哀し ん
描きかけのカンバスに差す冬の月 奈
似てゐるやうで似てゐない眉 河
モスラには琵琶湖一気に呑み干され み
にはかに上がるBMI値 七
春寒の運動靴の紐むすぶ な
双子ころがる日永の堤 り
ふるさとを思へば遠き花の夜 ん
改修中のからくり時計 奈
ナオ こつこつと窓を敲いて小鳥来る 河
たゆまず励む綱取りの秋 み
懸賞に当たり新酒を酌み交はす 七
ロバートデニーロは左利き な
オーボエの調べに乗せる頭蓋骨 り
金毘羅宮の長き石段 ん
土踏まずまだ無き吾子に靴を買ふ 奈
ここでは犬が泳いでもいい 河
綱吉の墓をたづねる歴女たち み
明日は湯島のカルチャ-センタ- 七
月光のスマホの声はぎこちなく な
案山子に詰めるあをき脳味噌 り
ナウ 爽やかに気球は恋の唄を乗せ ん
君と暮らした街を横切る 奈
てのひらにはらりと受けるぼたん雪 河
運命線で入試うらなひ み
ぬかるみを歩めば花の開く音 七
夢もうつつも春のきらめき な
起首:2014年 7月26日(土)
満尾:2014年 9月 1日(月)
捌き:ゆかり
2014年7月2日水曜日
七吟歌仙・夏の野の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
夏の野にあれば尾をもつ女かな まにょん
玻璃のまなこで鎮める泉 ゆかり
樹の杳き鼓動を斧に響かせて なむ
こだまの過ぎし線路秋めく ぐみ
月光の街は水族館となり 苑を
虫聴きにゆく人の集まる 令
ウ 掃除機のコードひゆるりと巻き取られ 恵
消防男子に焦がれて燃える ん
流体も波動も愛の方程式 り
指先で解く紐のいろいろ む
なりはひに辞書編み趣味に竹を編み み
好きこそものの上手でもなし を
出奔の果ての紙子を照らす月 令
すつぽん鍋の最初の生血 恵
眠るのがこはくて聖書読んでをり ん
囁きあへる数多なる母 り
間引かれしゆゑに滂沱の花散らむ む
春雨ぢやとは言へぬ道行 み
ナオ 朝寝して二人どうでもよくなりぬ を
裏書の銘うそかまことか 令
優勝の記念の手形黒々と 恵
古老ひつそり羊と暮らす ん
恩讐のくちびる遠きまで届く り
滝壺に彫る不動明王 む
護符よけて厨の守宮すつと消え み
ポップコーンは跳ねて飛び散る を
メール打つ姉と本読む妹と 令
叶ふ願ひを自らつぶす 恵
月光のあふれ狂ひし村ひとつ ん
焼き払つてはしのぐ夜寒よ り
ナウ 風立つをいまと定めて雁の列 む
雪すら友にいざ生きめやも み
極北の小屋に洗濯物を干す を
苞のなかから出だす土雛 令
掌に受くる間もなく飛花天へ 恵
蝶の道なら辿りゆくべし ん
起首:2014年 5月27日(火)
満尾:2014年 7月 2日(水)
捌き:ゆかり
夏の野にあれば尾をもつ女かな まにょん
玻璃のまなこで鎮める泉 ゆかり
樹の杳き鼓動を斧に響かせて なむ
こだまの過ぎし線路秋めく ぐみ
月光の街は水族館となり 苑を
虫聴きにゆく人の集まる 令
ウ 掃除機のコードひゆるりと巻き取られ 恵
消防男子に焦がれて燃える ん
流体も波動も愛の方程式 り
指先で解く紐のいろいろ む
なりはひに辞書編み趣味に竹を編み み
好きこそものの上手でもなし を
出奔の果ての紙子を照らす月 令
すつぽん鍋の最初の生血 恵
眠るのがこはくて聖書読んでをり ん
囁きあへる数多なる母 り
間引かれしゆゑに滂沱の花散らむ む
春雨ぢやとは言へぬ道行 み
ナオ 朝寝して二人どうでもよくなりぬ を
裏書の銘うそかまことか 令
優勝の記念の手形黒々と 恵
古老ひつそり羊と暮らす ん
恩讐のくちびる遠きまで届く り
滝壺に彫る不動明王 む
護符よけて厨の守宮すつと消え み
ポップコーンは跳ねて飛び散る を
メール打つ姉と本読む妹と 令
叶ふ願ひを自らつぶす 恵
月光のあふれ狂ひし村ひとつ ん
焼き払つてはしのぐ夜寒よ り
ナウ 風立つをいまと定めて雁の列 む
雪すら友にいざ生きめやも み
極北の小屋に洗濯物を干す を
苞のなかから出だす土雛 令
掌に受くる間もなく飛花天へ 恵
蝶の道なら辿りゆくべし ん
起首:2014年 5月27日(火)
満尾:2014年 7月 2日(水)
捌き:ゆかり
2014年5月15日木曜日
七吟歌仙・薄氷の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
薄氷に遠くからくる眠りかな まにょん
春昼といふ妙なる調べ ゆかり
雛あられ貰ふ少しを手に受けて 令
赤くかがやく大学の門 ぐみ
月今宵画廊喫茶の読書会 なむ
白桃にほふ尾道の雨 幹子
ウ 放蕩の終はりを告げるつづれさせ 七
伯父の遺品に少女の写真 ん
約束は約束にして百合むせぶ り
白靴よごしサヌカイト掘る 令
真夜過ぎて少し傾く大南瓜 み
案山子と呼ばれをる三代目 む
体育の日の溶けさうな鉄仮面 子
雲の峰より巨人現る 七
隊商は沙漠に長き影をひき ん
拷問器具はなべて鋭角 り
獄舎から花の降るのを見てをりぬ 令
角は川なる春の樹ゆれて み
ナオ 文庫本ばらして貼つていかのぼり む
四畳半には地球儀ふたつ 子
蓑虫の無番地にゐる風の中 七
露に濡れたる封書が届く ん
飛び乗れば動き始める後の月 り
下に広がるイギリス海岸 令
齢の差も波間の雪も消えてゆき み
幾夜介護のごとき騎乗位 む
アララトの山より新世界始む 子
ドボルジャックのレコ-ド洗ひ 七
珈琲と煙草が好きで長髪で ん
指名手配のかほに似てゐる り
ナウ 大正の武者人形のある町家 令
風鈴売についてゆく子ら み
かの笛の伝承は碑に刻まれて む
虻蜂と食ふ空也の最中 子
見渡せば雲間流るる花衣 七
岬を濡らす春の長雨 ん
起首:2014年 2月18日(火)
満尾:2014年 5月15日(木)
捌き:ゆかり
薄氷に遠くからくる眠りかな まにょん
春昼といふ妙なる調べ ゆかり
雛あられ貰ふ少しを手に受けて 令
赤くかがやく大学の門 ぐみ
月今宵画廊喫茶の読書会 なむ
白桃にほふ尾道の雨 幹子
ウ 放蕩の終はりを告げるつづれさせ 七
伯父の遺品に少女の写真 ん
約束は約束にして百合むせぶ り
白靴よごしサヌカイト掘る 令
真夜過ぎて少し傾く大南瓜 み
案山子と呼ばれをる三代目 む
体育の日の溶けさうな鉄仮面 子
雲の峰より巨人現る 七
隊商は沙漠に長き影をひき ん
拷問器具はなべて鋭角 り
獄舎から花の降るのを見てをりぬ 令
角は川なる春の樹ゆれて み
ナオ 文庫本ばらして貼つていかのぼり む
四畳半には地球儀ふたつ 子
蓑虫の無番地にゐる風の中 七
露に濡れたる封書が届く ん
飛び乗れば動き始める後の月 り
下に広がるイギリス海岸 令
齢の差も波間の雪も消えてゆき み
幾夜介護のごとき騎乗位 む
アララトの山より新世界始む 子
ドボルジャックのレコ-ド洗ひ 七
珈琲と煙草が好きで長髪で ん
指名手配のかほに似てゐる り
ナウ 大正の武者人形のある町家 令
風鈴売についてゆく子ら み
かの笛の伝承は碑に刻まれて む
虻蜂と食ふ空也の最中 子
見渡せば雲間流るる花衣 七
岬を濡らす春の長雨 ん
起首:2014年 2月18日(火)
満尾:2014年 5月15日(木)
捌き:ゆかり
2014年5月8日木曜日
脇起し七吟歌仙・蝶の眼の卷
掲示板で巻いていた連句が満尾。
蝶の眼の冥く荒れたる眞晝かな 月犬
反轉したる菜の花の黄 ゆかり
水温む因幡の國と書き添へて 藤幹子
うつむきがちに通る寺町 苑を
鈴の音の仕舞ひは月に吸ひ込まれ 恵
雲英粉をまぶす花野の圖柄 七
ウ 蜻蛉の羽を背中に求愛す まによん
神仙郷には天女百人 月犬
物干の滿艦飾に夏の雲 り
海へ海へと金魚屋の聲 子
夜汽車とは天井棧敷ではないか を
手刀を切り受くる懸賞 恵
賽振れば窓にかかれる冬の月 七
猫を枕に日向ぼこして ん
水音の滿ちてくるらしわが胸に 犬
今はの際の絃樂合奏 り
山姥の爪を切る日か飛花落花 子
新社員くん鉛筆を噛む を
ナオ 佛蘭西語ですと言ひ張り津輕辯 恵
すまんすまんと口癖遺傳 七
燈臺の螺旋階段驅け昇り ん
幾歳月を妻とふたりで 犬
戀といふ名の旅をしてゐたと言へ り
巖窟王に轡を喰ませ 子
父と子と離れて歩く冬田道 を
砂鐵の描く妖しき模樣 恵
全身にタトゥを入れる種族住み 七
霧を吐き出す水晶の谷 ん
吊橋も月の滴に濡れる夜の 犬
實石榴裂けて南野陽子 り
ナウ セーターをほぐせば蜂蜜のにほふ 子
瓶詰にして賣る雪女郎 を
目藥を點すとき動く喉佛 恵
切手舐めれば甘き春風 七
ひとひらの花の行方と青空と ん
ふらここ高く氣圈をあとに 犬
起首:2014年 3月 2日(日)
満尾:2014年 5月 8日(木)
捌き:ゆかり
蝶の眼の冥く荒れたる眞晝かな 月犬
反轉したる菜の花の黄 ゆかり
水温む因幡の國と書き添へて 藤幹子
うつむきがちに通る寺町 苑を
鈴の音の仕舞ひは月に吸ひ込まれ 恵
雲英粉をまぶす花野の圖柄 七
ウ 蜻蛉の羽を背中に求愛す まによん
神仙郷には天女百人 月犬
物干の滿艦飾に夏の雲 り
海へ海へと金魚屋の聲 子
夜汽車とは天井棧敷ではないか を
手刀を切り受くる懸賞 恵
賽振れば窓にかかれる冬の月 七
猫を枕に日向ぼこして ん
水音の滿ちてくるらしわが胸に 犬
今はの際の絃樂合奏 り
山姥の爪を切る日か飛花落花 子
新社員くん鉛筆を噛む を
ナオ 佛蘭西語ですと言ひ張り津輕辯 恵
すまんすまんと口癖遺傳 七
燈臺の螺旋階段驅け昇り ん
幾歳月を妻とふたりで 犬
戀といふ名の旅をしてゐたと言へ り
巖窟王に轡を喰ませ 子
父と子と離れて歩く冬田道 を
砂鐵の描く妖しき模樣 恵
全身にタトゥを入れる種族住み 七
霧を吐き出す水晶の谷 ん
吊橋も月の滴に濡れる夜の 犬
實石榴裂けて南野陽子 り
ナウ セーターをほぐせば蜂蜜のにほふ 子
瓶詰にして賣る雪女郎 を
目藥を點すとき動く喉佛 恵
切手舐めれば甘き春風 七
ひとひらの花の行方と青空と ん
ふらここ高く氣圈をあとに 犬
起首:2014年 3月 2日(日)
満尾:2014年 5月 8日(木)
捌き:ゆかり
2014年5月5日月曜日
俳句の骨法 齋藤朝比古句集『累日』を読む
どういう訳か齋藤朝比古さんのことを考えようとすると「俳句の骨法」という言葉が頭をよぎる。多分朝比古さんが誰か別の人の作品に触れて「俳句の骨法をよく理解した上で独自の…」みたいなことを書かれているのを偶然読んで印象に残っているのだと思うが、いま確かめるすべはない。すべはないのだが、とにかく私の脳の中では齋藤朝比古→俳句の骨法という条件反射ができあがっている。私は朝比古さんの伝記的な事実はほとんど知らないので、単に書かれた俳句作品を読みながら、俳句の骨法とはなんなのか考えて行きたい。句集は数年ごとに六章に分かれているが、句柄の変遷があるわけでもなさそうなので、章立ても無視して拾ってゆきたい。
一 目の焦点をずらす
俳句というのはもしかしたらある種の宗教かも知れない。スピリチュアル小説のジェームズ・レッドフィールド『聖なる予言』には、しばしば目の焦点をずらしてエネルギーを見る場面がある。それをエネルギーだ、オーラだと語ると危ない人だと思われたり、友人を失ったりしかねないが、俳句の場合はどうだろう。その見えようを「発見」として称揚し、「新鮮な驚き」としてありがたがっていたのではなかったか。たぶん宗教家が修行を積むように、俳人も修業を積んで骨法を獲得するのだ。普通のことが普通に見えているうちは俳人にはなれない。
ひとつづつ影を増やして雛飾る
雛壇に雛人形を飾るとき、おのずと雛人形の影も増える。まったく当たり前のことで、実社会ではなんの役にも立たない。もし子どもがそんなことを言ったら「馬鹿なこと言ってないで勉強しなさい」と叱られるのが関の山だろう。ところがひとたび俳句形式として作品に定着させるや否や、それは発見として読むものの心を捉えて離さない。まさに俳句の不思議である。「影」としか書いていないことによって、見えてくる溢れる光。言外のはかなさ、作中主体の屈託。
鬼やんま頭運んできたりけり
生物が移動するさまを捉えて、その身体部位を運んでいるとはふつう感じない。これも修行によって到達した極意だろう。そしてそう書かれたとき、読者は改めて鬼やんまの異形に思い至る。ある種の俳人の目の焦点は確かにずれているのだ。そしてそこで見えたものは、誰もエネルギーとかオーラとか呼ばないけれど、俳人という共同体の中では、もっとも尊ばれるべきものなのである。
ニ 言葉を遊ぶ
言葉の中には、語源的にさらに要素に分解できるものがある。多くの場合それをいちいち分解して用いることはないのだが、なにかの拍子にその要素が急にメッセージを主張し出すことがある。そうしたメッセージを鋭敏に捉えることも修行のひとつだろう。
北窓を開けば北を向いてをり
唖然とする。そりゃそうだ。単に諧謔と呼ぶのとも少し違うだろう。これは氷山の一角に過ぎず、作者は複合語を見ると、これは俳句にならないだろうかといちいち分解しているのではあるまいか。
風花の風なくなつてしまひけり
こちらはたまらなく切ない。でもそれが風花というものなのだ。単にリフレインと呼ぶのとも少し違うだろう。歳時記に載せて人類が続く限り伝えてもらいたい句である。
三 脱衣
章の見出しとしてもっと適切なものがありそうだが、朝比古句には脱衣の句が多い。もののありようが変わるとき、そこに変わるものと変わらぬものを見出す、という試練をおのれに課しているかのようである。
マフラーをたためば重さありにけり
巻いているときには感じなかったマフラーの物質としての重さが、たたんでみると忽然と感じられる。その意識の変化の不思議さをさらりと捉えている。
セーターを脱ぎてセーターあたたかし
同工であるが、体温という陶然とするぬくもりに対する根源的な嗜好が、リフレインという作句技巧をまとって表現されている。
四 手品
朝比古句には、ときどき手品に騙されるようなものが混ざっている。読みながら、騙されてはいけない、騙されてはいけない、と過剰に反応し、論理的な正当性を検証したくなるような句だ。
脱いで着て脱いで水着になつてをり
またしても脱衣である。何か騙されているような気がするのだが、実際に水着に着替えるプロセスを検証すると、確かにこうなのだ。水着の上に、脱ぐためのものをわざわざ一枚着る人類の習性。それを「なつてをり」と詠む作者の立ち位置は動物行動学者の視線だ。
ふらここの影がふらここより迅し
手品系の最たるものは本句だろう。最初これはうそだと思った。円弧を描くふらここの方が平面上を直線運動する影より大きく移動するのだから、本当はふらここの方が速いのでは、と。大きく移動する分、ほんものは明らかに遠回りして感じられ、その分遅く見えるだけでは、と。でもよくよく考えてみると、本当に影の方が速い場合がある。
簡単のため、ふらここの軌道を半円とし、ふらここが一番下がったとき地面に接し、太陽は左上45度の無限遠点にあり、ふらここが左から右に進み、半径rとする。
最初に思ったのは、影は2rしか進まず、ふらここは2πr/2進むのだから、どう考えたってふらここの方が速いではないか、ということだった。が、よく考えると、起点からふらここの軌道が太陽光線と接する左下45度の位置まで、影は逆に左へ進む。ふらここが左下45度を過ぎると影は右に進むようになる。そして、影は最下点から2r右に進む。影が最下点から2r右に進む間、ふらここは半円のさらに半分を進むので2πr/4=πr/2移動する。2>π/2なので、影の方が速いのである。
五 フォーム
齋藤朝比古といえば有季定型である。が、そこに一途な重みや悲壮な決意のようなものは感じられない。むしろ、優れた変化球投手がどんな球種でも同じフォームから繰り出すことができる、そんな飄々としたイメージを感じる。落語家は自分が笑っちゃいけない、とも言い換えられるか。そのようにして、ぬらりひょんと焦点のずれた句や言葉遊びの句や手品のような句が、まったく同じフォームから繰り出される。結局のところ俳句の骨法とは、五七五のことなのである。
『豆の木』No.18(2014年5月)初出
一 目の焦点をずらす
俳句というのはもしかしたらある種の宗教かも知れない。スピリチュアル小説のジェームズ・レッドフィールド『聖なる予言』には、しばしば目の焦点をずらしてエネルギーを見る場面がある。それをエネルギーだ、オーラだと語ると危ない人だと思われたり、友人を失ったりしかねないが、俳句の場合はどうだろう。その見えようを「発見」として称揚し、「新鮮な驚き」としてありがたがっていたのではなかったか。たぶん宗教家が修行を積むように、俳人も修業を積んで骨法を獲得するのだ。普通のことが普通に見えているうちは俳人にはなれない。
ひとつづつ影を増やして雛飾る
雛壇に雛人形を飾るとき、おのずと雛人形の影も増える。まったく当たり前のことで、実社会ではなんの役にも立たない。もし子どもがそんなことを言ったら「馬鹿なこと言ってないで勉強しなさい」と叱られるのが関の山だろう。ところがひとたび俳句形式として作品に定着させるや否や、それは発見として読むものの心を捉えて離さない。まさに俳句の不思議である。「影」としか書いていないことによって、見えてくる溢れる光。言外のはかなさ、作中主体の屈託。
鬼やんま頭運んできたりけり
生物が移動するさまを捉えて、その身体部位を運んでいるとはふつう感じない。これも修行によって到達した極意だろう。そしてそう書かれたとき、読者は改めて鬼やんまの異形に思い至る。ある種の俳人の目の焦点は確かにずれているのだ。そしてそこで見えたものは、誰もエネルギーとかオーラとか呼ばないけれど、俳人という共同体の中では、もっとも尊ばれるべきものなのである。
ニ 言葉を遊ぶ
言葉の中には、語源的にさらに要素に分解できるものがある。多くの場合それをいちいち分解して用いることはないのだが、なにかの拍子にその要素が急にメッセージを主張し出すことがある。そうしたメッセージを鋭敏に捉えることも修行のひとつだろう。
北窓を開けば北を向いてをり
唖然とする。そりゃそうだ。単に諧謔と呼ぶのとも少し違うだろう。これは氷山の一角に過ぎず、作者は複合語を見ると、これは俳句にならないだろうかといちいち分解しているのではあるまいか。
風花の風なくなつてしまひけり
こちらはたまらなく切ない。でもそれが風花というものなのだ。単にリフレインと呼ぶのとも少し違うだろう。歳時記に載せて人類が続く限り伝えてもらいたい句である。
三 脱衣
章の見出しとしてもっと適切なものがありそうだが、朝比古句には脱衣の句が多い。もののありようが変わるとき、そこに変わるものと変わらぬものを見出す、という試練をおのれに課しているかのようである。
マフラーをたためば重さありにけり
巻いているときには感じなかったマフラーの物質としての重さが、たたんでみると忽然と感じられる。その意識の変化の不思議さをさらりと捉えている。
セーターを脱ぎてセーターあたたかし
同工であるが、体温という陶然とするぬくもりに対する根源的な嗜好が、リフレインという作句技巧をまとって表現されている。
四 手品
朝比古句には、ときどき手品に騙されるようなものが混ざっている。読みながら、騙されてはいけない、騙されてはいけない、と過剰に反応し、論理的な正当性を検証したくなるような句だ。
脱いで着て脱いで水着になつてをり
またしても脱衣である。何か騙されているような気がするのだが、実際に水着に着替えるプロセスを検証すると、確かにこうなのだ。水着の上に、脱ぐためのものをわざわざ一枚着る人類の習性。それを「なつてをり」と詠む作者の立ち位置は動物行動学者の視線だ。
ふらここの影がふらここより迅し
手品系の最たるものは本句だろう。最初これはうそだと思った。円弧を描くふらここの方が平面上を直線運動する影より大きく移動するのだから、本当はふらここの方が速いのでは、と。大きく移動する分、ほんものは明らかに遠回りして感じられ、その分遅く見えるだけでは、と。でもよくよく考えてみると、本当に影の方が速い場合がある。
簡単のため、ふらここの軌道を半円とし、ふらここが一番下がったとき地面に接し、太陽は左上45度の無限遠点にあり、ふらここが左から右に進み、半径rとする。
最初に思ったのは、影は2rしか進まず、ふらここは2πr/2進むのだから、どう考えたってふらここの方が速いではないか、ということだった。が、よく考えると、起点からふらここの軌道が太陽光線と接する左下45度の位置まで、影は逆に左へ進む。ふらここが左下45度を過ぎると影は右に進むようになる。そして、影は最下点から2r右に進む。影が最下点から2r右に進む間、ふらここは半円のさらに半分を進むので2πr/4=πr/2移動する。2>π/2なので、影の方が速いのである。
五 フォーム
齋藤朝比古といえば有季定型である。が、そこに一途な重みや悲壮な決意のようなものは感じられない。むしろ、優れた変化球投手がどんな球種でも同じフォームから繰り出すことができる、そんな飄々としたイメージを感じる。落語家は自分が笑っちゃいけない、とも言い換えられるか。そのようにして、ぬらりひょんと焦点のずれた句や言葉遊びの句や手品のような句が、まったく同じフォームから繰り出される。結局のところ俳句の骨法とは、五七五のことなのである。
『豆の木』No.18(2014年5月)初出
2014年2月16日日曜日
七吟歌仙・人日の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
人日の空気人形痩せにけり 七
七種囃すけつたいな節 ゆかり
青丹よし平城京に棲みつきて 銀河
野積みされたる旧式ポスト まにょん
入船は河口に月は中天に ぐみ
われらは窓に爽籟と在り なむ
ウ 歓声のよく谺する運動会 令
印刷室に残る落書 七
鍵かけて愛の扉を開くべし り
女心は空飛ぶ絨毯 河
目覚めれば黒子数へる指があり ん
夏芝居では木偶をあやつり み
むきだしのCDに似て月涼し む
鴉逐はれて山の塒へ 令
春の水踏んづけてゐる子らの笑み 七
石鹼玉吐く赤い風琴 り
パーティーの果て前庭の花明かり 河
太宰治は跨線橋へと ん
ナオ 見下ろせばラットレースの人の波 み
酢漬けでできる万能細胞 む
割烹着すがたでぴよんと跳ねてみる 令
賞味期限のみな切れていて 七
断捨離の流れ久遠に轟ける り
ターザンが棲む密林の滝 河
火星では美女や怪獣入り乱れ ん
千の蛍をまとひ君待つ み
たがよきかさても雨夜の品定め む
一振りのまた黄金しろがね 令
月光写真世界の果てを露光する 七
菌に貯まる地縁血縁 り
ナウ 穂芒の頭髪うすき国訛り 河
淡き墨にて宛名記せば ん
雪代の濁りになじむ陸と海 み
仔猫らに説く専守防衛 む
花をみて九条通りに塔をみて 令
ふくらんでゆく夢のまた夢 七
起首:2014年 1月 8日(水)
満尾:2014年 2月16日(日)
捌き:ゆかり
人日の空気人形痩せにけり 七
七種囃すけつたいな節 ゆかり
青丹よし平城京に棲みつきて 銀河
野積みされたる旧式ポスト まにょん
入船は河口に月は中天に ぐみ
われらは窓に爽籟と在り なむ
ウ 歓声のよく谺する運動会 令
印刷室に残る落書 七
鍵かけて愛の扉を開くべし り
女心は空飛ぶ絨毯 河
目覚めれば黒子数へる指があり ん
夏芝居では木偶をあやつり み
むきだしのCDに似て月涼し む
鴉逐はれて山の塒へ 令
春の水踏んづけてゐる子らの笑み 七
石鹼玉吐く赤い風琴 り
パーティーの果て前庭の花明かり 河
太宰治は跨線橋へと ん
ナオ 見下ろせばラットレースの人の波 み
酢漬けでできる万能細胞 む
割烹着すがたでぴよんと跳ねてみる 令
賞味期限のみな切れていて 七
断捨離の流れ久遠に轟ける り
ターザンが棲む密林の滝 河
火星では美女や怪獣入り乱れ ん
千の蛍をまとひ君待つ み
たがよきかさても雨夜の品定め む
一振りのまた黄金しろがね 令
月光写真世界の果てを露光する 七
菌に貯まる地縁血縁 り
ナウ 穂芒の頭髪うすき国訛り 河
淡き墨にて宛名記せば ん
雪代の濁りになじむ陸と海 み
仔猫らに説く専守防衛 む
花をみて九条通りに塔をみて 令
ふくらんでゆく夢のまた夢 七
起首:2014年 1月 8日(水)
満尾:2014年 2月16日(日)
捌き:ゆかり
2014年1月4日土曜日
七吟歌仙・山脈の巻
掲示板で巻いていた連句が満尾。
山脈に泳がせてゐる鯨かな 銀河
千億年は続く冬らし ゆかり
らふそくの炎かすかにまたたいて まにょん
母の形見の未明の童話 七
芋坂を月に誘はれ団子屋へ 苑を
扇を置いて真ん中の兄 泥酔
ウ 金髪の案山子おへそにピアスして ぐみ
赤いソファーで待ちくたびれた 河
ごめんねと舐める涙に塩の味 り
死海文書の謎深まりて ん
からくりの箱を土産に夏の旅 七
月の欠片を冷蔵庫から を
犀のせて歌姫の船たゆたへば 酔
繰り返し積む河原の小石 み
楽園に実は秋根は冬弥陀笑まふ 河
ときに逃げたる鰐も覗かせ り
海に散る因幡の花は魂となり ん
スペ-スシャトルで吹く石鹸玉 七
ナオ あまちやんの最終回を見逃して を
古漬ひとつ残る糠床 酔
冬の野に大皺小皺くろぐろと み
新幹線がつなぐニッポン 河
ざりがにの色あざやかに星条旗 り
キャンベルスープの缶を開ければ ん
混沌のなかより無常つまみ上げ 七
菊人形の指が不自然 を
独酌の栗名月の酔ひごこち 酔
十三里来て冬を待つ駅 み
ピラミッド見上げる汗を思ひをり 河
夢の金魚の揺れる玄室 り
ナウ 口笛を草原渡る風にのせ ん
大空翔るパラグライダー 七
地球軸まはせば海のあふれくる を
荒れをともなひ比良の八講 酔
あふぎみる花吹雪こそしづかなれ み
囀みちる始祖鳥の杜 河
起首:2013年11月26日
満尾:2014年 1月 4日
捌き:ゆかり
山脈に泳がせてゐる鯨かな 銀河
千億年は続く冬らし ゆかり
らふそくの炎かすかにまたたいて まにょん
母の形見の未明の童話 七
芋坂を月に誘はれ団子屋へ 苑を
扇を置いて真ん中の兄 泥酔
ウ 金髪の案山子おへそにピアスして ぐみ
赤いソファーで待ちくたびれた 河
ごめんねと舐める涙に塩の味 り
死海文書の謎深まりて ん
からくりの箱を土産に夏の旅 七
月の欠片を冷蔵庫から を
犀のせて歌姫の船たゆたへば 酔
繰り返し積む河原の小石 み
楽園に実は秋根は冬弥陀笑まふ 河
ときに逃げたる鰐も覗かせ り
海に散る因幡の花は魂となり ん
スペ-スシャトルで吹く石鹸玉 七
ナオ あまちやんの最終回を見逃して を
古漬ひとつ残る糠床 酔
冬の野に大皺小皺くろぐろと み
新幹線がつなぐニッポン 河
ざりがにの色あざやかに星条旗 り
キャンベルスープの缶を開ければ ん
混沌のなかより無常つまみ上げ 七
菊人形の指が不自然 を
独酌の栗名月の酔ひごこち 酔
十三里来て冬を待つ駅 み
ピラミッド見上げる汗を思ひをり 河
夢の金魚の揺れる玄室 り
ナウ 口笛を草原渡る風にのせ ん
大空翔るパラグライダー 七
地球軸まはせば海のあふれくる を
荒れをともなひ比良の八講 酔
あふぎみる花吹雪こそしづかなれ み
囀みちる始祖鳥の杜 河
起首:2013年11月26日
満尾:2014年 1月 4日
捌き:ゆかり
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