お正月と云えば炬燵を囲んで福笑いに興じたことを思い出す人も多いことだろう。顔の輪郭を描いた紙の上に目隠しをした子が目、鼻、口を並べてゆき、できあがった変な顔を面白がるという単純な遊びではあったが、おさなごころに偶然の快楽ともいうべきものを強烈にインプットされたのだった。
さて、俳句である。袋回しという遊びをやったことがある人も多いだろう。五人なら袋を五つと短冊をたくさん用意して一題ずつ袋に題を書き、五分とか時間を決めたら後はひたすら全員で自分の手許の袋の題で時間内にできる限り句を作って短冊を袋に入れ、五分経ったら隣の人に袋を回し、というのを一巡するまで繰り返す。そのような追い詰められた状況の中から、なんでそんな句ができたのか自分でも分からないようなよい句ができることがある。なまじ考えると、人はマンネリズムに陥りやすい。語の思いがけない衝突を「とりあはせ」として重んじる俳句においては、偶然をあなどってはいけないのだ。その考えをさらに発展させると、コンピューター・プログラミングというテクノロジーを利用して、客観的、散文的に意味をくみ取ることができない語の連なりをランダムに無尽蔵に作り出そうという試みに至る。俳句自動生成ロボット「はいだんくん」の誕生である。
手始めに句型の雛形をいくつか用意して、そこに季語や名詞をランダムに流し込んでみよう。
①ララララをリリリと思ふルルルかな
②ララララがなくてリリリのルルルかな
③ララララのリリララララのルルルルル
④ララララにリリのルルルのありにけり
⑤ララララにしてリリリリのルルルルル
などいくつかの句型の「ララララ」とか「リリリ」に音数だけ合わせ意味を無視してランダムに名詞や新年の季語を流し込むとこんな句が生まれる。
あかるさを今年と思ふ烏かな はいだんくん
をととひがなくてつぎめの年男
正月の影正月の水あかり
身長に去年の昭和のありにけり
しろがねにして真空の鏡餅
私は一年中こんな福笑いみたいなことをしている。
(『俳壇』2016年1月号(本阿弥書店)初出)
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