前号までで季語、名詞、動詞をランダムに変化させるようになり、だいぶ俳句らしい目鼻立ちが整ってきた。さらに細やかな表現を獲得するために、今度は修飾語について考えてみよう。ただしロボットにやらせたいのは、意味が通ることではない。うわべだけもっともらしく、そのじつ、何言ってんだかさっぱり分からないもの、それでいて俳句以外のものではなさそうなもの、そんな句が求めるところだ。
さて、修飾を機能的に考えると、活用しない体言(名詞、代名詞)を修飾する連体修飾と、活用する用言(動詞、形容詞、形容動詞)を修飾する連用修飾があるわけだが、その区分よりは品詞ごとに見て行った方が分かりやすいだろう。
その一。形容詞。形容詞は事物の性状または事物に対する感情を表す。活用としてはク活用もしくはシク活用がある。赤し→赤く、など活用時にシが落ちるものがク活用で、うれし→うれしくなどシが落ちないものがシク活用であるが、動詞ほど複雑な活用ではない。
その二。形容動詞。「きれいだ」「すてきだ」の類いで、「だ」をとると名詞となる。異論はあるかも知れないが、ロボットとしては、名詞のひとつの特殊な属性として形容動詞を管理するものとし、活用語尾である「なり」とか「たり」は句型の一部として管理することにする。 形容詞や形容動詞は活用形により連体修飾となったり、連用修飾となったりする。ここまで来れば、修飾語として残る主なものはひとつだ。
その三。副詞。副詞は自立語で活用がなく主語にならない語で、主として連用修飾語として用いられる。状態副詞、程度副詞、叙述副詞などの分類があるにはあるが、俳句自動生成ロボットにとってそんな区別はあまり意味がないだろう。字数だけ気をつけて「いつせいに」とか「たちまち」とか「一寸」とか「やや」とか、俳句の表現として手垢にまみれた陳腐な語を登録しておこう。修飾語とは大体そういうものである。そこに本質はない、たぶん。
人体は空よりうれし花の昼 はいだんくん
(『俳壇』2016年4月号(本阿弥書店)初出)
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