直線を鱗と思ふ紀元節 ゆかりり
鄙の入江の香る壺焼 聡
うらうらと雲を欄間に刳りぬいて ふもと
僧侶と祖母の四方山話 瓦すずめ
月影の沁みるばかりの大谷石 聡
団栗太る城下公園 と
ウ 馬の目に遊ぶ炎のさやかなり 抹茶金魚
風にはためく元カレの背 ゆかり
駅前に恋のギターを弾き続け め
冬めく指に星影を生む 魚
牛乳をこぼしてからの四畳半 り
アッフォガードに溶ける短夜 聡
辺獄の月の涼しさかくあらむ と
水晶玉の隠さるる地下 め
空耳は昨日の息の青さして 魚
卒業式の練習の午後 り
花ふぶく吹奏楽の熄みしあとも 聡
鱒いただけば斑のうつくしき と
ナオ 安宿に鼻の大きな客ばかり め
秒針のなき時計の静止 魚
電流を集め未来へ行き過ぎる り
無人カーではまだ人を轢く 聡
吊るされた男のほかはみんな嘘 と
夏雲が笑む選挙ポスター め
短夜の鏡の中の冷気美し 魚
ハイレゾで聴くオンドマルトノ り
いつのまにスイングし居りすすきの穂 聡
二百十日を前の買ひ出し と
浮浪児が柘榴を眠たげに齧る め
椅子を積み上げ飛ぶ後の月 魚
ナウ 歩くたびさざ波が消す下駄の跡 り
スロージンでは失せぬおもかげ 聡
きみの名できみを呼ぶたび遠くなる と
名残の雪に猫の尾は揺れ め
一塊のさざめきとして花の雲 魚
海でつながる春の国々 り
起首:2020年 2月11日(火)
満尾:2020年 2月26日(水)
捌き:ゆかり
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