尾長来て人を見下ろす残暑かな 晶子
誰も知らない色のなき風 ゆかり
夕月の声はひゆうひゆう出づるらん 茱萸
メタセコイアの湖の道 令
遠雷に分別らしき犬の顔 小奈生
ルーシー語るフェミニズム論 由季
ウ 神無月襖開ければオノ・ヨーコ 玉簾
火をつけたのはあんたぢやないの 子
吹き消せぬほどのらふそく立ち並び り
密に集ひて百物語 萸
怖いもの見たさのやうに好きになり 令
愛のかたちはアシンメトリー 生
豆雛の並べられたる違ひ棚 季
漆器に積もる黄砂払ひて 簾
龍天に登り易げな雲に月 子
首都高のごと蝌蚪の紐伸び り
廃線をたぐり寄せれば花の宴 萸
記憶の底のペンギン村に 令
ナオ 飛躍的認知の歪みかもしれず 生
階段下りるだまし絵の中 季
トリッパのトマト煮のあるレストラン 簾
諜報部員のグレーのコート 子
解読に時間のかかる懸想文 り
地層の奥の衣ずれを追ふ 萸
根の国に通ずるための井戸替を 令
蜘蛛の巣払ふ葬儀看板 生
配達と掛持ちをするアルバイト 季
遠回りしてこほろぎを聴く 簾
ゆつくりと地球の昇る月の海 子
億千万の曼珠沙華燃ゆ り
ナウ 歌姫の生命線は長く伸び 萸
母郷はるかに雪の山脈 令
ほろ酔ひの温泉卓球ほどほどに 生
弥勒菩薩の手首の角度 季
猫の背に上着に連れて帰る花 簾
あをあをと積む蓬餅の香 子
起首:2020年 8月10日(月)
満尾:2020年 8月26日(水)
捌き:ゆかり
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