前号では旧作のロボット群のロボット群のうち、単機能で実験的なものについて紹介した。うち「忌日くん」に関しては、二〇一二年に週刊俳句で西原天気さんと私にて対談を行った(二物衝撃と俳句ロボット「忌日くん」の爆発力)。対談の最後で私は、以下のように発言した(部分的な引用で文意が通じない部分のみ多少改稿)。
どこかの大学あたりでは真剣に俳句自動生成を研究されている方が多分いらして、そういう分野では日本語形態素解析技術やテキストマイニング技術を駆使して自己学習機能や共起表現機能を有するものがあるのではないかと想像します。今回はそのような先端技術に無縁なおもちゃにすぎない私のロボットを取り上げていただき、ありがとうございました。私のおもちゃではなく、先端技術の風を感じるような真の俳句自動生成ロボットの記事をいつの日か「週刊俳句」で拝見したいものです。
それから四年経つのだが、いまだに「私、大学で真剣に俳句自動生成を研究しています」という方には出会っていない。たぶん産業への応用の可能性が少なく、費用対効果に見合わないのだろう。自己学習機能については、俳句は囲碁や将棋と異なり勝ち負けがはっきりしないので、なにを成功体験として蓄積するのかが悩ましい。テレビ番組の評判解析なら、放送後ネット上を片っ端からその番組を示すキーワードでサーチして、それとともに用いられる特徴的な語彙を解析し、好評/不評を判断できようが、個々の俳句作品に対して、そのようなフィードバック解析を試みることは現実的には難しいだろう。
金に糸目をつけないなら、この際、大脳生理学分野での研究にも期待したい。人間が俳句を読んだとき、脳内でなにが起きるのか。被験者をふたつのグループに分け同じ俳句を読ませたときに、片方のグループでは脳内麻薬物質が大量に分泌され、もう片方はそうではなかった、なんて事実が科学的に説明できるなら、同じ傾向の人が同じ結社や同人に集まることが説明できるのかも知れない。そうなると科学のお墨付きで互いに、あなたとは違うんです、とか言うのだろう。でも、そんなことは解明されない方が、平和に暮らせるんだろうなあ…。
(『俳壇』2016年12月号(本阿弥書店)初出)
【追記】
2018年2月26日にNHKの番組でAI俳句が紹介された。北海道大学を中心とした「札幌AIラボ」で研究が進められているとのことである。
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