2017年8月14日月曜日

(21)頭韻を踏む

 先月「はいだんくん」を大改修してリリースした。いろいろ手を入れた中で目玉と言えるのは、頭韻を踏むことができるようになったことだろう。この連載の(15)で田島健一について触れて以来、懸案だったものだ。
 「はいだんくん」では、以下の三通りで頭韻を踏むことができる。

(一)母音+子音(つまり同音)
   あかるさは姉より紅し洗ひ髪    はいだんくん
   夕立のゆびきりやけふ揺れんとす
   図書館の鳥図書館の心太
   肩ひもの風の多くて髪洗ふ
   ありのまま汗のあくびをあふれけり


(二)母音
   顔文字をまるめてゐたるはだかかな はいだんくん
   ふくらみや閏皐月のくだり坂
   ががんぼは睫毛のやうに果てにけり
   ひらがなを西日と思ふ時間かな
   バタフライぱらぱら漫画よりたのし


(三)子音
   先生としづかな空とゐて涼し    はいだんくん
   駆けてゐる金魚の子には海馬なし
   にんげんもにほひもなくて夏帽子
   過ぎ行きて裂ける水星百日紅
   マニキュアの森を用ゐる祭かな


 もちろん韻を踏まないこともできるし、韻を踏むように指定しても、条件に合致する語がなければ、韻は踏まない。また、母音か子音を指定しておけば自ずと同音も現れるので、現状は「母音」「子音」「なし」がランダムに一対一対三の割合となるように設定してある。

 こうして掲句を見渡すとどうだろう。(一)はいかにも言葉遊びとして意外な語の連結を求めているように、(二)(三)は繊細な調べに気を使っているように見えてこないだろうか。もしわずかでもそんな気がしてくるとしたら、それは読者のあなたの心の中で起こっていることに違いない。なぜならロボットは韻を踏むにしても踏まないにしても、今までどおりなにも考えていないのだから。


(『俳壇』2017年9月号(本阿弥書店)初出) 

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