先月「はいだんくん」を大改修してリリースした。いろいろ手を入れた中で目玉と言えるのは、頭韻を踏むことができるようになったことだろう。この連載の(15)で田島健一について触れて以来、懸案だったものだ。
「はいだんくん」では、以下の三通りで頭韻を踏むことができる。
(一)母音+子音(つまり同音)
あかるさは姉より紅し洗ひ髪 はいだんくん
夕立のゆびきりやけふ揺れんとす
図書館の鳥図書館の心太
肩ひもの風の多くて髪洗ふ
ありのまま汗のあくびをあふれけり
(二)母音
顔文字をまるめてゐたるはだかかな はいだんくん
ふくらみや閏皐月のくだり坂
ががんぼは睫毛のやうに果てにけり
ひらがなを西日と思ふ時間かな
バタフライぱらぱら漫画よりたのし
(三)子音
先生としづかな空とゐて涼し はいだんくん
駆けてゐる金魚の子には海馬なし
にんげんもにほひもなくて夏帽子
過ぎ行きて裂ける水星百日紅
マニキュアの森を用ゐる祭かな
もちろん韻を踏まないこともできるし、韻を踏むように指定しても、条件に合致する語がなければ、韻は踏まない。また、母音か子音を指定しておけば自ずと同音も現れるので、現状は「母音」「子音」「なし」がランダムに一対一対三の割合となるように設定してある。
こうして掲句を見渡すとどうだろう。(一)はいかにも言葉遊びとして意外な語の連結を求めているように、(二)(三)は繊細な調べに気を使っているように見えてこないだろうか。もしわずかでもそんな気がしてくるとしたら、それは読者のあなたの心の中で起こっていることに違いない。なぜならロボットは韻を踏むにしても踏まないにしても、今までどおりなにも考えていないのだから。
(『俳壇』2017年9月号(本阿弥書店)初出)
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