垢のなき耳で見にゆくさくら哉 なな
乳母車押す囀のなか ゆかり
遅き日の遅きバス待ちくたびれて 媚庵
山はこちらに海はそちらに 霞
月ひとつ砂に埋めれば魚の啼く 七節
野分のなかを駆けぬける影 な
ウ 跳躍し神に近づく夜の鹿 り
ワインセラーに口紅忘れ 庵
東京で私の未来だつた人 霞
ノイズは濡れるラジオのやうに 節
ペン入れを螢光ペンの飛び出して な
半日でとる原付免許 り
湾岸に熱風吹きて月のぼる 庵
あさぼらけるけかつぱはねるね 霞
鍵穴に宇宙卵が挿してある 節
アンドロメダ忌まで飲み明かす な
花冷えの記憶の漬かるホルマリン り
万愚節とて行く女坂 庵
ナオ 淡雪に母校の灯りは消えたまま 霞
色紙に溢る言葉優しき 節
伊東屋のサンプルとして置かれたる な
アニマル柄の還暦祝ひ り
漕ぎながら枯野の果ての補陀落へ 庵
真綿でくるむ貴方の右手 霞
燃えてゐる麒麟の舌は夜を這ふ 節
新潮文庫の天アンカット な
海底のやうに時間が降り積もり り
先祖代々槍の家柄 庵
望の夜に神と仏と盃を 霞
波間ただよひ尾花蛸行く 節
ナウ 雁瘡の幼子ふたり寝かしつけ な
メビウスの帯クラインの壺 り
見あげればエデンの方へ雲流れ 庵
伊予柑むいたままの手のひら 霞
言の葉を拾いつつ行く花のなか 節
じやんけんぽんで出づるてふてふ な
起首:2018年03月27日
満尾:2018年05月14日
捌き:ゆかり
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