2020年4月11日土曜日

六吟獅子吼 春夕焼の巻

何事があれど美し春夕焼       ふう

 落花の径を犬のじゃれあい    ゆかり

妹乗せて姉よふらここゆるり押せ    う

 都踊は山のあなたに        りゑ


逢いたいとぶんぶん飛んでやってくる 遊凪

 香水臭き駅前広場         西生

滴々と喫茶店主首傾げつつ   珈琲と俳句

 クレヨンで描く赤橋の川       凪


ひやおろし汲みかわそうぜ鬼の子と   ゑ

 関取好む甘いカフェオレ       句

三日月は東と西を間違えて       生

 蕪村の軸の鑑定をせん        う

どろどろと時劫の音の続きおり     り

 東尋坊も氷ってしまう        ゑ

無言でも目配せで買う宝くじ      凪

 コピ・ルアックを大盤振舞い     句

そして消ゆ雛人形も国境も       生


起首:2020年 4月 7日(火)

満尾:2020年 4月11日(土)

捌き:ゆかり

2020年2月26日水曜日

脇起し五吟歌仙 直線の巻

   直線を鱗と思ふ紀元節      ゆかりり

    鄙の入江の香る壺焼         聡

   うらうらと雲を欄間に刳りぬいて  ふもと

    僧侶と祖母の四方山話     瓦すずめ

   月影の沁みるばかりの大谷石      聡

    団栗太る城下公園          と

ウ  馬の目に遊ぶ炎のさやかなり   抹茶金魚

    風にはためく元カレの背     ゆかり

   駅前に恋のギターを弾き続け      め

    冬めく指に星影を生む        魚

   牛乳をこぼしてからの四畳半      り

    アッフォガードに溶ける短夜     聡

   辺獄の月の涼しさかくあらむ      と

    水晶玉の隠さるる地下        め

   空耳は昨日の息の青さして       魚

    卒業式の練習の午後         り

   花ふぶく吹奏楽の熄みしあとも     聡

    鱒いただけば斑のうつくしき     と

ナオ 安宿に鼻の大きな客ばかり       め

    秒針のなき時計の静止        魚

   電流を集め未来へ行き過ぎる      り

    無人カーではまだ人を轢く      聡

   吊るされた男のほかはみんな嘘     と

    夏雲が笑む選挙ポスター       め

   短夜の鏡の中の冷気美し        魚

    ハイレゾで聴くオンドマルトノ    り

   いつのまにスイングし居りすすきの穂  聡

    二百十日を前の買ひ出し       と

   浮浪児が柘榴を眠たげに齧る      め

    椅子を積み上げ飛ぶ後の月      魚

ナウ 歩くたびさざ波が消す下駄の跡     り

    スロージンでは失せぬおもかげ    聡

   きみの名できみを呼ぶたび遠くなる   と

    名残の雪に猫の尾は揺れ       め

   一塊のさざめきとして花の雲      魚

    海でつながる春の国々        り


起首:2020年 2月11日(火)

満尾:2020年 2月26日(水)

捌き:ゆかり


2020年2月20日木曜日

七吟歌仙 音階の巻

   音階の下りてゆきたる寒暮かな    あんこ

    左手が打つ底冷えの底       ゆかり

   島影のやうやう白む舷に      くらげを

    翼ふるはす名も知らぬ鳥       れい

   月めざし友とジョギングするコース   遊凪

    早稲の香ゆるく揺れ淀みをり      梓

ウ  円墳のやうに盛られし菊膾       陽子

    やはらかき目の誘ふ次の間       こ

   かたかたと百の端末動きをり       り

    順に奥より始まる脱皮         を

   新月の梔子の香と大麻の香        い

    結んだ髪の浴衣連れにて        凪

   ここへきて遺書がどうのと揉めてゐる   梓

    シルデナフィルを過剰摂取し      子

   冴返る山と思へば君の腹         こ

    うす霞みをる注連縄と垂        り

   花すでに此の世の崎を昏うして      を

    バスは走れり街に帰らむ        い

ナオ 見学は灘界隈の酒の蔵          凪

    するする喉を滑る蘭鋳         梓

   国芳の化け猫つひに出てきたり      子

    果てなく続く闇の板塀         こ

   べからずの鳥居とべしのおみくじと    り

    取替へてみんふた心もて        を

   男装の姫に恋する内侍たち        い

    佳人の園に響く鈴の音         凪

   野に萩はこぼれて重き日の残り      梓

    バーレッスンの手すり冷ややか     子

   林檎食む同じ口もて秘密告ぐ       こ

    昼月透ける鰯雲なり          り

ナウ 旅いつもつづきのやうに始まりて     を

    降りつむ雪に記憶蔵はる        い

   パソコンのメモリ容量拡大し       凪

    しやつくりのまま過ごす閏日      梓

   豊かなる胸を隠せし花ごろも       子

    春夕焼へ深くお辞儀を         こ


起首:2020年 1月24日(金)

満尾:2020年 2月20日(木)

捌き:ゆかり


2020年1月25日土曜日

不定期刊連句誌『みしみし』第四号、発売しました。

黄色と黒は連句のしるし、不定期刊連句誌『みしみし』第四号、1/24に発売しました。今回も豪華連衆です。

・七吟歌仙 自然薯の巻、韃靼人の巻、笹舟の巻
・その評釈
・連衆作品(ネットでは読めません。敬称略)…佐山哲郎、なかはられいこ、鴇田智哉、高橋洋子、田中槐、佐藤りえ、中嶋憲武、浅沼璞、西生ゆかり、西原天気、堺谷真人、冬泉、月野ぽぽな、岡田由季、斎藤秀雄、小林苑を、三島ゆかり
(歌仙には加えて、金井真紀、小津夜景も参加)

・浅沼璞『塗中録』を読む 三島ゆかり
・常設記事 連句骨子(三十六歌仙)

定価1000円。ご注文はみしみし舎officemisimisiアットgmail.comまで。

また、以下のお店で現物を手にとってからお求めになることができます。
札幌のがたんごとんさん、
早稲田の古書ソオダ水さん、
明大前の七月堂古書部さん、
下北沢の本屋B&Bさん、
松本の栞日さん、
梅田の蔦屋書店さん、
神戸元町の1003さん、
福岡の本のあるところ ajiroさん、
松山の本の轍さん。

よろしくお願いします。

2019年12月20日金曜日

七吟歌仙 笹舟の巻

   笹舟のゆくへや今朝の冬野川    冬泉
    子より大きな息白き犬     ゆかり
   サーカスの始まり告げる声のして ぽぽな
    笑顔を保つ軟体の美女      由季
   月淡くしてコルカタの道をゆく   夜景
    霧を換喩とまちがへながら    秀雄
ウ  冷まじきものに国立競技場     苑を
    聖母子像に火薬匂へり       泉
   はぐれたら外人墓地で落合はん    り
    薄き耳朶やはらかく噛み      な
   パン種を伸ばし捩ぢるもモテ仕草   季
    アンモナイトを夢に置き去り    景
   のむ水の腹の地層を疾くとほる    雄
    逆三角は正義のしるし       を
   麦踏んで定家が仰ぐ明月に      泉
    仮名遣ひよきうぐひすのゐて    り
   姿見の奥の奥まで花盛        な
    テクマクマヤコン楊貴妃になれ   季
ナオ 片恋の涙を獏に舐めさせて      景
    切手溢るる電話ボックス      雄
   空色の硝子の床の下は街       を
    終末旅行はレーション持つて    泉
   目が合へば隠るる二つ結ひ揺るる   り
    プールサイドは午後のきらめき   な
   牧神のひとの部分が凍えゐる     季
    巨大な熊が高く跳ぶイヴ      景
   星間の点線すでにうすけむり     雄
    月宮殿に箏を奏でて        を
   波斯青磁烏扇の実をこぼす      泉
    酒乱の父の舐める柚子味噌     り
ナウ 谷合ひの里しらじらと明け初めて   な
    脈の速さの雪はふりつむ      景
   大鍋にぼるしちの湯気立ち昇り     を
    初点前には銀鼠を着て       泉
   打ち揃ふ堺商人花の宴        季
    帆のはためきの音のうららか    雄


起首:2019年12月 1日(日)
満尾:2019年12月20日(金)
捌き:ゆかり