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2012年12月1日土曜日

こじのり2@picaso

寒暮大久保はピカソにて小島のり子(fl)×大口純一郎(p)デュオを聴く。

(1st set)
1-1)I thought about you
1-2)雪譜
1-3)darn that dream
1-4)over the rainbow
1-5)in walked Bud

(2nd set)
2-1)枯葉
2-2)holy land
2-3)travesia
2-4)when i fall in love
2-5)開運

 大口純一郎さんはオスカー・ピーターソンみたいに空間を埋め尽くすタイプではないから、デュオは空間という味方でも敵でもある恐るべきものとの、実はトリオなのであって、大いにスリリングで楽しかった。随所、大口さんは空間を味方につけて、だましにかかる。
 小島のり子さんのオリジナルの1-2)、「ハッシャバイ」のようなコーダルな部分と、ペダルポイントの部分が交互に現れるワルツなのだが、実に美しい。音量のコントロールで、ふっと耽美的世界にふたり足を踏み入れるあの感じ。これこそデュオの醍醐味というものだろう。
 普通はスローバラードで演奏されることの多い1-4)、テンポを上げただけでなく、何小節か付け足していたのか。古いスタンダードに新しい表情があった。
 モンクの1-5)、コンポジションの異常さと大口さんの個性とデュオの特異性との相乗効果により、この日いちばんスリリングな演奏だった。後テーマの後、また始まってしまったflとpの長いソロ交換の応酬、いやあ、素晴らしかった。
 2-1)、演奏に関係ないことをこの際、声を大にして言いたいのだが、autumn leavesという英題にだまされてはいけない。歳時記では「枯葉」は冬の季語なのである。
 2-2)はシダー・ウォルトン作のマイナー・ブルース。原曲は聴いたことがなく、25年くらい前に峰厚介さんや本田竹曠さんたちがしばしば演奏 していた記憶が。ようやく、題名が分かりました。本日の演奏ではブルース・パートだけでなく、速度が変幻自在なバースのようなパートもあり。きっと原曲が そうなのだろう。
 2-3)はミルトン・ナシメント作。ブラジルの中学生の混声合唱の課題曲のような雰囲気。
 2-4)はアルト・フルートによるスロー・バラード。そこらのフルート奏者にありがちな上手そうにつける自動的なビブラートを嫌う小島のり子さんの、ここぞというときのビブラートには悩殺される。

 なんか、もう、ほんとに楽しかった。アフターアワーズは、ミュージシャンのお二人、M氏に私もお邪魔し「でめ金」。大口さんは私と同じ中学の大 先輩だったことが判明。音楽教師が同じだった。M氏はその中学に隣接する高校出身。ちなみに小島のり子さんとしばしば共演するもう一人のピアニストの二村 さんは私と同じ高校の2年か3年先輩。世の中はへんにせまい。

2012年8月12日日曜日

二の腕を揺らし高まる秋の笛

イーストワンのこじのり4すばらし。
早春賦? コード進行が広々としたワルツ。空間の自然な残響がきれい。
加賀鳶 和のマイナーブルース。
スカイラーク トリルがきれいなバラード。
五木の子守唄 アルトフルートによるリハーモナイゼイションの美しいナンバー。
アナザーユー アップテンポで燃える。二の腕を揺らして秘技禁技。
フォトグラフィア アンコールのボサノバ。

いつも二村さんは斜め後ろから聴いていたので、あんなににこにこ弾いていたのかと認識を新たにしました。

2012年5月13日日曜日

久しぶりにジャズを聴く

こじのりさんのカルテット@渋谷KOKO。

小島のり子(fl)4-リンヘイテツ(p)鈴木克人(b)水口泰邦(d)

(1st set)
I thought about you
photographia
voyage
If you could see me now
こきりこ

(2nd set)
long and winding road
I should care
bolivia
everything happens to me
浦霞

 リンヘイテツさんは初めて聴いたけど、オーソドックスにして達者。いっぺんでファンになりました。このカルテットで演奏するのは初めてだって 言っていたけど、フルートの裏でのカウンター・ラインの作り方とか、おお、ここでブロック・コード来ますか、とか、おお、ここでトレモロで高まりますか、 とか、ちょっとしたフルートのフレーズのきれっぱしをすかさず引用してオブリガードするさまとか、実に新鮮で、私はにこにこして口をぱくぱくして聴いてお りました。水口さんもリンさんのくり出す奇数拍パターンにぴたっと合わせてかっこよかった。
 一夜にしてバンドがぐんぐんできあがってゆくさま。あれ、こじのりさんも吹いていてそうとう楽しかったんじゃないかなあ。

2009年10月12日月曜日

冬の日

2008年秋のやまぐち連句会主催の連句大会における小島のり子さん(fl)の音源を拝聴する。
 句と曲は必ずしも一対一対応ではなく、オリジナルありスタンダードありフリーインプロヴィゼーションありという自由なスタンスとなっている。

  狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉 芭蕉
     Easy Come Easy Go(オリジナル)

 発句に付けたのはどこかモンキッシュな小島のり子さんのオリジナル・ブルース。いかにも狂句こがらしの身である。

   たそやとばしるかさの山茶花   野水
     山茶花(オリジナル)

 脇に付けたのも小島のり子さんのオリジナルのワルツ。三拍子上に4つ音を詰め込んで童謡の「さざんかさざんか」の一節を重ねる難しい符割の、危うくもうつくしい曲である。

  有明の主水に酒屋つくらせて    荷兮
     七田(オリジナル)

 第三も小島のり子さんのオリジナル。「七田」というのは私は飲んだことがないが佐賀の名酒らしい。どこかデューク・エリントンの「プレリュード・トゥ・ア・キス」に通じる吟醸香が感じられる。

   かしらの露をふるふあかむま   重五
  朝鮮のほそりすゝきのにほひなき  杜國
   日のちりちりに野に米を苅    正平
     I'm Confessin'

 三句まとめてスタンドナンバー。澁谷盛良さんのベース・ソロをフィーチャーするあたり、いかにも「あかむま」の雰囲気がある。

  わがいほは鷺にやどかすあたりにて 野水
   髪はやすまをしのぶ身のほど   芭蕉
  いつはりのつらしと乳をしぼりすて 重五
   きえぬそとばにすごすごとなく  荷兮
     Zingaro

 四句まとめてスタンダード・ナンバー。初めて聴く曲であるが、哀愁をたたえたボサノバである。

  影法のあかつきさむく火を燒て   芭蕉
   あるじはひんにたえし虚家    杜國
  田中なるこまんが柳落るころ    荷兮
     Wee Small Hours

 アルト・フルートをフィーチャーしたナンバーである。
 
   霧にふね引人はちんばか     野水
  たそがれを横にながむる月ほそし  杜國
   となりさかしき町に下り居る   重五
     Stella By Starlight

 山口友生さんのギターをフィーチャーしたナンバーである。山口友生さんは全編を通じナイロン弦のクラシック・ギターを弾いているが、じつにパワフルな音が胸を打つ。

  二の尼に近衛の花のさかりきく   野水
   蝶はむぐらにとばかり鼻かむ   芭蕉
     Those Spring Days(オリジナル)

 いかにも桜花爛漫な雰囲気のアップテンポなボサノバ・ナンバーである。


  のり物に簾透顔おぼろなる     重五
   いまぞ恨の矢をはなつ声     荷兮
  ぬす人の記念の松の吹おれて    芭蕉
   しばし宗祇の名を付し水     杜國
     Evindence

 名残表は四句まとめてセロニアス・モンクの曲。名残表ともなれば演奏も乗り乗りで大技も繰り出される。

  笠ぬぎて無理にもぬるゝ北時雨   荷兮
   冬がれわけてひとり唐苣     野水
  しらじらと砕けしは人の骨か何   杜國
   烏賊はゑびすの國のうらかた   重五
     Here's That Rainy Day

 雨と言えば、バンド稼業の人は条件反射でこの曲になるのである。


  あはれさの謎にもとけし郭公    野水
     Hototogisu(小島のり子書き下ろし)

 日本情緒ただようナンバーである。ソロはなし。

   秋水一斗もりつくす夜ぞ     芭蕉
     Autumn Water(小島のり子書き下ろし)

 アップテンポのモーダルなナンバーである。このあたり、演奏時間を短く畳みかけて名残表の疾走感がある。

  日東の李白が坊に月を見て     重五
     山口友生書き下ろし

 月の座は山口友生さんの書き下ろし。ソロなし。

   巾に木槿をはさむ琵琶打     荷兮
     山口友生ギターインプロヴィゼイション

 「琵琶打」からインスパイアされたであろう即興演奏である。

  うしの跡とぶらふ草の夕ぐれに   芭蕉
     澁谷盛良ベースインプロヴィゼイション

 アルコによるソロであるが、最後に牛の鳴き声そっくりに演奏し、聴衆にどよめきが起こる。

   箕に鮗の魚をいたゞき      杜國
     小島のり子フルートインプロヴィゼイション

 鮗(コノシロ)は、コハダ。寿司ネタである。このあたり、牛→鮗という句の付け方と、ベースの即興→フルートの即興という演奏の付け方の対比が味わい深い。

  わがいのりあけがたの星孕むべく  荷兮
   けふはいもとのまゆかきにゆき  野水
     You Are Too Beautiful

 ピッコロをフィーチャーしたバラードであるが、ギターのオブリガードも実にうつくしい。

  綾ひとへ居湯に志賀の花漉て    杜國
     山口友生書き下ろし

 花の座も山口友生さんの書き下ろし。ソロはなし。不思議な雰囲気の曲である。

  廊下は藤のかげつたふ也      重五
     Wistaria Flower(小島のり子書き下ろし)

 挙句にふさわしく、いかにも名残り惜しい雰囲気のあるボサノバ・ナンバーである。

アンコール 獺祭
 挙句の果てはアップテンポのオリジナルでこれも日本酒の名にちなんだ曲。パワー全開で豪快に秘技絶技を次から次へ繰り出す。やはりジャズ・ミュージシャンは落とし前をつけないと終わらないのである。

 この演奏を生で聴けてしかも連句を巻けるなんて、この世のものとは思えない贅沢三昧である。桃源郷である。すごいぞ、やまぐち連句会。

(2008年秋のやまぐち連句会の催しについて、別のところに書いた記事を転載しました。)

2009年10月11日日曜日

連句しませんか。vol.2

という冊子を頂く。
 やまぐち連句会というところが編集・発行しているもので、第2回山口県総合芸術文化祭「連句大会」の記録集である。この連句大会がいかにすごいかというと、単に愛好家が集まって歌仙を巻くのにとどまらず、なんとジャズ・ミュージシャンを招き、芭蕉の「冬の日」にインスパイアされたライヴ演奏を実現させているところである。
 ジャズと連句は非常に似たところがある。どちらも即興性を重んじ、出会いを大切にし、文台おろせばすなはち反古というその場限りの集中力といさぎよさがある。
 冊子を読んでいると、小島のり子さん(fl)、澁谷盛良さん(b)、山口友生さん(g)によるジャズ演奏が違和感なく連句愛好家に受け止められた様子が伝わってくる。

 それにしてもハードである。一泊二日の日程の二日目午前中がライヴ、引き続き11:30~15:30に連句実作会というのはかなりの強行軍なのではないだろうか。そのようにして巻かれた半歌仙10巻、歌仙1巻、箙(不明。裏と名残表が6句ずつから成っている)1巻、正式十句合1巻が冊子には収録されている。上記ジャズ・ミュージシャンも参加しているし、中には9歳の男の子がお母さんと連句初体験しましたというほほえましい注記もある。

 このようにして、連句もジャズも脈々と伝えられている。

(2008年秋のやまぐち連句会の催しについて、別のところに書いた記事を転載しました。)