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広げたる翼あかるき千草かな ぽぽな
空耳のごと白き虫の音 ゆかり
月明にかざすシャンパンはにかんで ゆらぎ
スクリーンにはをどる踊り字 佳世乃
席立ちて席にハンカチ残りたり 令
百合一輪に礼状を添へ うさぎ
ウ 暗号をマングローブの森に解く 由季
鳥になつたり魚になつたり な
ゆつくりと鼻から吸つて鼻で吐く り
観音様と仰ぐ裸身を ぎ
高き日の映る鏡にせかされて 乃
靴を響かせコサック騎兵 令
掘りたての人参を手に駆け回り う
月も凍るし穴も凍るし 季
熟睡をぴくりと動く犬の眉 な
祖母から貰ふ輪ゴム九つ り
花万朶帝国陸軍埋蔵金 ぎ
はたらく船ははるのゆふぐれ 乃
ナオ 大阪に河口干潟の残されて 令
猫の飛び乗るこいさんの膝 う
眼鏡かけ憎まれ役で押し通す 季
同窓会にひとり足りない 乃
消印ははつなつのニューカレドニア な
ポストコロニアリズム論考 ぎ
いちまいの付箋を剥す昼深く う
送信あとは掃除機を連れ り
寝室の夫とのあひに誰かゐる 令
方程式は冷たく甘く 季
月光の届き始める楽器店 乃
エディーの方が先に逝く秋 な
ナウ 野は山へ移り疎らに茨の実 ぎ
双子同時に霜柱踏む う
日の当る場所を空までヒット曲 り
売家を見て大あくびして 令
塀を越え虚子庵からの花吹雪 季
うぐひすもちの餡のつややか 乃
起首:2021年10月12日(火)
満尾:2021年11月16日(火)
捌き:三島ゆかり
ごまだれの冷やし中華や退学す なな
長き行列続く片蔭 ゆかり
マラソンが見たさに風を押しのけて 祥貴
エンタシスよりケンタウロスが 青猫
月祀る遺構かさなるうぶすなに 冬泉
山茱萸の実を摘みとる手籠 酔鳴
ウ かなかなが奏でる革命のエチュード 鮭児
少し明るきグラスにウォッカ な
電流をあちらのお客様として り
いつしよにほとばしるわバリまで 貴
この雨にしなしなと四肢のアンニュイ 猫
わが屍をかこむ萍 泉
中国茶ひらかせてゐて月涼し 鳴
埋めもどされるモノリスの失禁 児
縦縞も横縞も魚氷に上る な
脱獄犯の模型のどけし り
酌み交はす叔父貴の背を花爛々 貴
地上五センチ彷徨つてみる 猫
ナオ 枯野にて北斎のこと蝌蚪のこと 泉
不意の雪とて入るドトール 鳴
じふぶんに煉獄ですよと医者笑んで 児
四角い文字もすらすらと読み 猫
美しきスヴェトラーナの太り肉 鳴
亡命の途に開く襟元 な
けだるさに点けたテレビのばか笑ひ 貴
同語反復する君の名は 泉
辻斬られ入れかはりたる右脳左脳 児
ところ狭しと管のいろいろ り
情火より遠くみなぎる望の月 猫
神籬立てし小舟冷ややか 鳴
ナウ うつむきと異なる磯菊の傾げ な
答へ終えたるのちの道行 貴
甍落ち箔落ち星を踏むたびに 泉
井戸の深さを返る水音 り
黒髪に染むをとつひの嘘へ花 児
かすみの海を馬の駆けゆく 猫
起首:2021年 8月 2日(月)
満尾:2021年 9月 9日(木)
裁き:ゆかり
梅の実やかなしき肌のやうなもの ゆかりり
掌にあればその遠きあまおと 聡
マスタング疾し輪郭を掻き消して 祥貴
すすきすすきと誘はれてをり 火尖
安全な真顔で月を見ていたい りゑ
もの確かむる虫の叢 銀河
ウ がうがうと紙吐き続く輪転機 黒兎
トースト焦がすエプロンのきみ ゆかり
ジューサーで絞りきれない思慕しつぽり 聡
仏と成してローラ・ビーチへ 貴
入国の合唱団は一人欠け 尖
竹冠の名字が似合ふ ゑ
杖笠に矢立忘るな寒の月 河
留守居の猫の額なでつつ 兎
着々と世界征服進みをり り
のの字浄土やみちのくの野辺 聡
寺山のむくんだ頬に花ひとひら 貴
蝶と化さねば剥がれぬ付箋 尖
ナオ パパゲーノ裏原宿で待ち合はせ ゑ
浮世の果てと知りて矢を射る 河
君の名で三度ログインしくじりて 兎
立ち上がらない金曜の朝 り
ケトルベルだんだん父に似てきたね 貴
抽斗で割る温泉卵 ゑ
ポケットの接骨院の回数券 兎
樹海へ入るバスは方舟 聡
暗がりに目覚めるものと眠るもの り
蕣ひらく音のかすかに 河
天網の匂ひのしない昼の月 尖
万のレンズにひかる小芋煮 貴
ナウ 冷たさに今すぐ閉じる二枚貝 ゑ
夢に出で来し雪の風景 河
十字路で解釈論でぶつかりて 聡
おのれを写すコンビニの窓 り
知らぬ間に増えし子の来て花の雲 兎
やむことのなきふらここの揺れ 尖
起首:2021年06月22日(火)
満尾:2021年07月07日(水)
捌き:三島ゆかり
思ひ出すための一日や桜餅 西生
やがてひかりにとける囀 三島
風船の轍をのこす雲もなし 秀雄
抜かれぬやうに立ち漕ぎをして なな
衛星の影よぎり行く大き月 今朝
留守番電話に蜩のこゑ れいこ
ウ 踊り出す案山子次世代ミュージック 茱萸
硝子の靴の踵を踏んで 生
砕け散る糸し糸しと言ふ心 島
木質化する君の俤 雄
飲み切つてしまふスコッチウヰスキー な
心臓三つ脳は九つ 朝
新しいパパと見てゐる夏の月 こ
水中眼鏡外さぬままに 萸
透きとほる巨きな傘の下にゐて 生
臨終を待つたそがれの国 島
青い鼻血が逆巻く川の花明り 雄
ゆつくり啜る椀より浅蜊 な
ナオ ひたすらにおむつを換へて春暮るゝ 朝
ござるござると村の長老 こ
アカウント端末ごとに使ひ分け 萸
時給の順に送る履歴書 生
煤逃の初体験は十五歳 島
をしを商鞅高次構造 雄
立ち読みの本にみごとな染みをつけ な
定刻に発つ深夜特急 朝
助手席を退いてくれない轡虫 こ
乃木忌終日ラジオを聴いて 萸
砂浜をムーンライトの尖りをる な
作りものめくカクテルの青 島
ナウ 鳥籠の耳にしづかな小米雪 雄
新聞王の捨てられぬ橇 生
セントラル・パークを抜けて蚤の市 朝
海を夢見て自鳴琴鳴る こ
追ふやうに逃れるやうに花筏 萸
つばめ飛び交ふ地図要らぬ町 な
起首:2021年04月12日(火)
満尾:2021年05月01日(水)
捌き:三島ゆかり
よく薫る女礼者の名刺かな 酔鳴
末広がりにゆづりはの青 ゆかり
その日また船尾に旗のはためいて 天気
きんとん雲で合つてゐるつけ 七
飲みすすむ桂男もめでる酒 遊凪
白露といふうつくしき嘘 青猫
ウ からつぽの郵便受けは行く秋の 夜景
ダリの画室にとろける時計 月犬
野良犬の眉間の先にぶら下がり けんじ
埋蔵金を打つ検土杖 鳴
変更を余儀なくされる海開き り
月を肴の見越しの葭簀 気
足跡をたうたう夢に埋めたり 七
ジーンズ似合ふ三つ編みのひと 凪
さて今日は霊長類になりすます 猫
雨水の城に隠す天秤 景
ゆさゆさと大枝に揺れ花の夜 犬
遠くに響く虫出しの雷 じ
ナオ 五丁目の歯医者はすぐに抜きたがり 鳴
まだ生きてゐる闇の神経 り
秒読みに入る枯野の発射台 気
混沌屯画像乱るる 七
さそり座の彼氏を追つてハワイまで 凪
ジュラ紀の魚となるまで泳ぐ 猫
燃ゆる木の顛末を説く閑古鳥 景
廃墟めきたる場末のホテル 犬
テーブルに伏せ置かれたる請求書 じ
放電しきるタニマチの袖 鳴
月の浜靴美しく並べたり 七
芒の波へまたひとり消え 気
ナウ 銀杏散る午後を開拓史の講義 り
株式相場上下運動 凪
旋律は雪原を越え戸口へと 犬
羊たちみな声がはりして 景
あかつきの足裏をそつと花の塵 猫
始発の動く風光る街 じ
起首:2021年 1月 5日(火)
満尾:2021年 2月13日(土)
捌き:ゆかり
音楽のしみだしてくる焚火かな りゑ
雪ともまがふ白きかなしみ ゆかり
パラフィンは三角形に畳まれて 苑を
若葉風ごと食らふドーナツ くらげを
月光の集まつてゐる鬼の牙 恵
ひよどり鳴いて献血車来る らくだ
ウ うすく濃く葡萄酒醸す闇の奧 冬泉
戦乙女の巻髪を梳く ゑ
上目にて見据ゑ鏡に下ろす布 り
どこでもドアの開く音がする 苑
流刑地を寒濤しぶく果の果 く
ミックスジュース一気に飲みて 恵
宝湯の口開けはみな顔なじみ だ
火山をのぞむ月涼しかれ 泉
思い出のありとはなしに遠眼鏡 ゑ
ぶんぶん回すマイクスタンド り
散り急ぐ花は阿修羅の姿して 苑
むなしく揺るる雨後のふらここ く
ナオ 新入生代表として立つクララ 恵
四ヶ国語を操るといふ だ
テーブルに塔のカードがめくられて 泉
つづら折りなる集積回路 ゑ
手袋をしながら無駄口を叩く り
時とはなにか言うてみたまへ 苑
中腹にアンモナイトの化石出て く
三兄弟は醤油塗れに 恵
銚子まで来ても残暑の揺るぎなし だ
分銅減らす秋の天秤 泉
名月のどこかに署名あるといふ ゑ
大道具からくべる打ち上げ り
ナウ 泉には弾けるやうな笑ひ声 苑
互ひ違ひにジェラートの色 く
一瞬で競歩の選手通り過ぐ 恵
足の裏から冴返りたる だ
ひきこもる花をしとねの九十九髪 泉
東風に誘はれ深むチェロの音 く
起首:2020年11月29日(日)
満尾:2020年12月17日(木)
捌き:ゆかり
鯊天の朱字に惹かれて引戸かな とつかあ太
黙々と呑む関取の背 ゆかり
犬が行き荷車が行き秋深み 媚庵
通りすがりにふれる楠 桐子
羚羊ら裸婦の如きに怠けたる 四羽
ぐるぐる回る磁石の針が ゆらぎ
指し示す立待月の三陰交 葉月
十日の菊を出窓に飾る 槐
ウ 色鳥に紛れ散髪してゐたり 火尖
アニメ声なるラジオDJ 太
大陸の帽子でガラス越しに笑む り
復員兵は瀬島龍三 庵
満水のダム湖にねむる綴じ暦 子
陸の蛸ならジルバが得意 羽
枕絵の女となつてまなこ閉づ ぎ
甘き誘ひの開く口元 月
ガルウイングのベンツの抱く朧月 槐
野焼き帰りの貌の男等 尖
花守と呼ばるるにまだ若すぎて 太
戦を知らぬ長き髪の毛 り
噴く汗にざくざくと行く羅生門 庵
顎までずらすガーゼのマスク 子
二オ 大統領咳のはづみにポチッとな 羽
「いいね」ひとつに怯む総書記 ぎ
兄上と呼ばれ背筋を駆けるもの 月
ろくろつ首の抜衣紋へと 槐
折紙の余りに折紙の匂ひ 尖
風やはらかく揺るるカーテン 太
木洩れ日に窓といふ窓開け放ち り
三年生が吹くリコーダー 庵
ありふれた写真を流れ出るボレロ 子
裸足のままで走る国道 羽
御百度のさなかに猿が乱入し ぎ
バッハ会長夢見るやうに 月
聖火台に聖火こほらせ月のあを 槐
皆がやさしく磨く猟銃 尖
二ウ 均等に切り分くることなら得意 太
巴里から届く手紙数通 り
黄砂降り不破写真館閉館す 庵
蒲公英色の初代ビートル 子
丸眼鏡拭いて悪役春惜しむ 羽
やがて薬の効いてくる頃 ぎ
身に着ける学校指定の網タイツ 月
負けてばかりのジュースじやんけん 槐
月もろき夜のプールに忍び込み 尖
尾崎豊は友の後輩 太
恐るべきアンチエージングの秘術 り
ステンドグラスごしののどけさ 庵
花ひとひら水のひかりへためらはず 子
風炎の日の谷の泣き声 羽
三オ 誰ぞやの服の掛けある落し角 太
鉄の掟と鋼の心 月
母に憑くおキツネ様を燻し出し 庵
以後千年は水を打つべし 尖
さざれ石巌と為らずタピオカに 羽
右に左にかはす急坂 り
疎ましき求婚者たち髯の伸び ぎ
実習生の握るカミソリ 子
かほの傷かくしつつゆく朝帰り 槐
チャージ不足に開かぬ改札 太
またしても取り残されて涼あらた 月
運動会のピストルの音 庵
月といふ響きは硬き天地に 尖
ソイレントグリーンで乾杯 羽
三ウ 近未来小説よりも長生きす り
南柯の残夢蟻の巣に蟻 ぎ
一人また一人と欠ける列にゐる 子
ボーイズラブも老け専にして 槐
親方に手とり教はるかんな掛け 太
釘を使はず柱を組んで 月
切妻の屋根の彼方に鳥帰る 庵
穀雨の紙を選る鳩居堂 尖
メーデーの月が綺麗ですね社長 羽
元の名で呼ぶ酔ひの横丁 り
竹輪麩がおでんにないと不機嫌に ぎ
念のため遠ざけるデンモク 子
花の夜をKEEP OUTのテープの黄 槐
駆除班を待つすゞめ蜂の巣 太
ナオ 風船を馬鹿正直に追跡す 月
ハーポ・マルクス笑ひとまらず 庵
現役のブラウン管の虹の痕 尖
シルクロードの蛇に涙は 羽
神々の民そしてまた神の民 り
黄昏てゆくグローバリズム ぎ
いち早くユーチューバーになる詩人 子
姿は見えず猫の鳴きたり 槐
吸殻のあれよと貯まる駐車場 太
六道辿り五衰するひと 月
小雨降る午すぎの野に野菊咲く 庵
ゆんゆと撓む蜻蛉の空 尖
母さんは帰つて来ない昼の月 羽
同級生の用を足す音 り
ナウ 焼却炉に雪は吹き込む燃え上がる ぎ
ひだり手ばかり失くす手袋 子
ポケットにつきたるままのしつけ糸 槐
何を買ふにも妻の見立てで 太
納豆を練る速度にて世は流れ 月
占星術師錬金術師 庵
始まりの違ふ花ざかりの交差 尖
チヨコレイトと響く永日 羽
起首:2020年 9月24日(木)
満尾:2020年10月28日(水)
捌き:ゆかり
日がうごく囮の鳥のかたむきに トキ
曼珠沙華咲く人の世の果て ゆかり
からすうり持つ迷ひ子に懐かれし 鯖男
オルゴール鳴り続く有明 あんこ
夏痩の野球評論家の語る 知昭
パイナップルの芯の抜き方 れいこ
どこまでも入れ子になつてゐるマスク キ
すぐ行かないと凍つちやふから 男
終電に忘れてしまふズブロッカ あ
般若心経口ずさみたる 昭
北斎の波かと思ふ伯母がゐて れ
オーロラとして転送さるる キ
松過ぎてモデムの音を夢に聞く り
二十年ほど笑つてすごし 男
花冷の鎖骨に揺るるターコイズ あ
名残の雪のすぐ消ゆる白 昭
たまごぼうろのふはとおぼろ夜 れ
起首:2020年 9月14日(月)
満尾:2020年 9月21日(月)
捌き:ゆかり
尾長来て人を見下ろす残暑かな 晶子
誰も知らない色のなき風 ゆかり
夕月の声はひゆうひゆう出づるらん 茱萸
メタセコイアの湖の道 令
遠雷に分別らしき犬の顔 小奈生
ルーシー語るフェミニズム論 由季
ウ 神無月襖開ければオノ・ヨーコ 玉簾
火をつけたのはあんたぢやないの 子
吹き消せぬほどのらふそく立ち並び り
密に集ひて百物語 萸
怖いもの見たさのやうに好きになり 令
愛のかたちはアシンメトリー 生
豆雛の並べられたる違ひ棚 季
漆器に積もる黄砂払ひて 簾
龍天に登り易げな雲に月 子
首都高のごと蝌蚪の紐伸び り
廃線をたぐり寄せれば花の宴 萸
記憶の底のペンギン村に 令
ナオ 飛躍的認知の歪みかもしれず 生
階段下りるだまし絵の中 季
トリッパのトマト煮のあるレストラン 簾
諜報部員のグレーのコート 子
解読に時間のかかる懸想文 り
地層の奥の衣ずれを追ふ 萸
根の国に通ずるための井戸替を 令
蜘蛛の巣払ふ葬儀看板 生
配達と掛持ちをするアルバイト 季
遠回りしてこほろぎを聴く 簾
ゆつくりと地球の昇る月の海 子
億千万の曼珠沙華燃ゆ り
ナウ 歌姫の生命線は長く伸び 萸
母郷はるかに雪の山脈 令
ほろ酔ひの温泉卓球ほどほどに 生
弥勒菩薩の手首の角度 季
猫の背に上着に連れて帰る花 簾
あをあをと積む蓬餅の香 子
起首:2020年 8月10日(月)
満尾:2020年 8月26日(水)
捌き:ゆかり
恢復の友の笑顔や薔薇垣根 月犬
髪の長さが及ぶ蜘蛛の囲 ゆかり
潮の香と日暮が軒に満ちてきて 苑を
そろりそろりと硯を洗ふ らくだ
有明はゆふべの夢の行き止まり ゆらぎ
案山子のシャツの破けたる襟 なな
ウ 美術室繁忙文化祭間近 なむ
浮浪雲めく烟草のけむり 犬
お代はりと桃井かおりの声色で り
豊葦原をいちにち歩く を
五本指ソックスどこも在庫なし だ
斎戒沐浴能面を打つ ぎ
だんだんと冬月硬くなつてゆき な
火鉢跨いだまんま動けず む
暗がりで魔女が煎じる惚れ薬 犬
呪ひにも似て片思ひ濃し り
薄墨の花の吐息を漏らすらむ を
紙風船はたたまれてをり だ
ナオ 逃げ水をキックボードで追ふ子ども ぎ
母の名前を繰り返し言ふ な
焼跡のかしこにしろきもの噴いて む
地獄の釜の蓋すこし開く 犬
舌おほき男をずつと待つてゐる り
小劇場の浮かぶ宵闇 を
スカウトの名刺もらひて有頂天 だ
霙まじりの滝壺に入る ぎ
NTTドコモのスマホ解約し な
色鳥のあの一羽捨てます む
分校の窓白白と月あかり 犬
どしどし集ふ夜寒のけもの り
ナウ 吹けよ風呼べよ嵐と咆哮す を
テンポを決めるドラムスティック だ
半生は舟を持たないままに過ぎ ぎ
空を読む目にあをの滲みて な
地上波の涯をはらはら花の雨 む
燕来る日のただいまのこゑ 犬
起首:2020年 6月 5日(金)
満尾:2020年 6月20日(土)
捌き:ゆかり
春分の引き摺つて出す木馬かな 恵
建替近き海棠の家 ゆかり
さへづりの筑波山麓みたすらん 酔鳴
杖をたよりに登る坂道 媚庵
月あかり手紙の束のほどかれる 桐子
霧を引き裂き山羊の鳴き声 恵
ウ 長き夜を銘々皿のたりなくて り
ゴディバのトリュフのせる舌先 鳴
パンの会例会ひらく竜土軒 庵
切断される赤い鉄骨 子
飛び越えた火が褌に燃え移り 恵
綺麗な涙色に鎮まる り
青年の貴種流離めく夏の月 鳴
RPG今日はここまで 庵
コメディアンの訃報ながれるツイッター 子
不法滞在なう花莚 恵
びびびびと進化してゐる残る鴨 り
タワークレーン風焔に揺れ 鳴
ナオ メルカリに手塚治虫の初版本 庵
やがて致死量超えるささやき 子
紅茶葉のたつぷり開く雪の夜は 恵
模様の違ふ脳の映像 り
イスパニア式決闘を持ちかけて 鳴
下がり続ける株式市況 庵
パレードの虹ながれゆく大通り 子
日焼けの染みのなかなか消えず 恵
やや古きヘアカタログをぱらぱらと り
サラダ館より届く桃の実 鳴
月光を浴びて見知らぬ町を行く 庵
強さうな名の新酒一気に 子
ナウ ひらがなの滑りでてくる細き筆 恵
朱も鮮やかに木漏れ日の下 り
帆船の三声高き登檣礼 鳴
書棚に古き旅行記探す 庵
花の雨おでこを窓にくつつけて 子
匂ひ豊かに開くはまぐり 恵
起首:2020年 3月20日(金)
満尾:2020年 4月15日(水)
捌き:ゆかり
何事があれど美し春夕焼 ふう
落花の径を犬のじゃれあい ゆかり
妹乗せて姉よふらここゆるり押せ う
都踊は山のあなたに りゑ
逢いたいとぶんぶん飛んでやってくる 遊凪
香水臭き駅前広場 西生
滴々と喫茶店主首傾げつつ 珈琲と俳句
クレヨンで描く赤橋の川 凪
ひやおろし汲みかわそうぜ鬼の子と ゑ
関取好む甘いカフェオレ 句
三日月は東と西を間違えて 生
蕪村の軸の鑑定をせん う
どろどろと時劫の音の続きおり り
東尋坊も氷ってしまう ゑ
無言でも目配せで買う宝くじ 凪
コピ・ルアックを大盤振舞い 句
そして消ゆ雛人形も国境も 生
起首:2020年 4月 7日(火)
満尾:2020年 4月11日(土)
捌き:ゆかり
直線を鱗と思ふ紀元節 ゆかりり
鄙の入江の香る壺焼 聡
うらうらと雲を欄間に刳りぬいて ふもと
僧侶と祖母の四方山話 瓦すずめ
月影の沁みるばかりの大谷石 聡
団栗太る城下公園 と
ウ 馬の目に遊ぶ炎のさやかなり 抹茶金魚
風にはためく元カレの背 ゆかり
駅前に恋のギターを弾き続け め
冬めく指に星影を生む 魚
牛乳をこぼしてからの四畳半 り
アッフォガードに溶ける短夜 聡
辺獄の月の涼しさかくあらむ と
水晶玉の隠さるる地下 め
空耳は昨日の息の青さして 魚
卒業式の練習の午後 り
花ふぶく吹奏楽の熄みしあとも 聡
鱒いただけば斑のうつくしき と
ナオ 安宿に鼻の大きな客ばかり め
秒針のなき時計の静止 魚
電流を集め未来へ行き過ぎる り
無人カーではまだ人を轢く 聡
吊るされた男のほかはみんな嘘 と
夏雲が笑む選挙ポスター め
短夜の鏡の中の冷気美し 魚
ハイレゾで聴くオンドマルトノ り
いつのまにスイングし居りすすきの穂 聡
二百十日を前の買ひ出し と
浮浪児が柘榴を眠たげに齧る め
椅子を積み上げ飛ぶ後の月 魚
ナウ 歩くたびさざ波が消す下駄の跡 り
スロージンでは失せぬおもかげ 聡
きみの名できみを呼ぶたび遠くなる と
名残の雪に猫の尾は揺れ め
一塊のさざめきとして花の雲 魚
海でつながる春の国々 り
起首:2020年 2月11日(火)
満尾:2020年 2月26日(水)
捌き:ゆかり
音階の下りてゆきたる寒暮かな あんこ
左手が打つ底冷えの底 ゆかり
島影のやうやう白む舷に くらげを
翼ふるはす名も知らぬ鳥 れい
月めざし友とジョギングするコース 遊凪
早稲の香ゆるく揺れ淀みをり 梓
ウ 円墳のやうに盛られし菊膾 陽子
やはらかき目の誘ふ次の間 こ
かたかたと百の端末動きをり り
順に奥より始まる脱皮 を
新月の梔子の香と大麻の香 い
結んだ髪の浴衣連れにて 凪
ここへきて遺書がどうのと揉めてゐる 梓
シルデナフィルを過剰摂取し 子
冴返る山と思へば君の腹 こ
うす霞みをる注連縄と垂 り
花すでに此の世の崎を昏うして を
バスは走れり街に帰らむ い
ナオ 見学は灘界隈の酒の蔵 凪
するする喉を滑る蘭鋳 梓
国芳の化け猫つひに出てきたり 子
果てなく続く闇の板塀 こ
べからずの鳥居とべしのおみくじと り
取替へてみんふた心もて を
男装の姫に恋する内侍たち い
佳人の園に響く鈴の音 凪
野に萩はこぼれて重き日の残り 梓
バーレッスンの手すり冷ややか 子
林檎食む同じ口もて秘密告ぐ こ
昼月透ける鰯雲なり り
ナウ 旅いつもつづきのやうに始まりて を
降りつむ雪に記憶蔵はる い
パソコンのメモリ容量拡大し 凪
しやつくりのまま過ごす閏日 梓
豊かなる胸を隠せし花ごろも 子
春夕焼へ深くお辞儀を こ
起首:2020年 1月24日(金)
満尾:2020年 2月20日(木)
捌き:ゆかり
笹舟のゆくへや今朝の冬野川 冬泉
子より大きな息白き犬 ゆかり
サーカスの始まり告げる声のして ぽぽな
笑顔を保つ軟体の美女 由季
月淡くしてコルカタの道をゆく 夜景
霧を換喩とまちがへながら 秀雄
ウ 冷まじきものに国立競技場 苑を
聖母子像に火薬匂へり 泉
はぐれたら外人墓地で落合はん り
薄き耳朶やはらかく噛み な
パン種を伸ばし捩ぢるもモテ仕草 季
アンモナイトを夢に置き去り 景
のむ水の腹の地層を疾くとほる 雄
逆三角は正義のしるし を
麦踏んで定家が仰ぐ明月に 泉
仮名遣ひよきうぐひすのゐて り
姿見の奥の奥まで花盛 な
テクマクマヤコン楊貴妃になれ 季
ナオ 片恋の涙を獏に舐めさせて 景
切手溢るる電話ボックス 雄
空色の硝子の床の下は街 を
終末旅行はレーション持つて 泉
目が合へば隠るる二つ結ひ揺るる り
プールサイドは午後のきらめき な
牧神のひとの部分が凍えゐる 季
巨大な熊が高く跳ぶイヴ 景
星間の点線すでにうすけむり 雄
月宮殿に箏を奏でて を
波斯青磁烏扇の実をこぼす 泉
酒乱の父の舐める柚子味噌 り
ナウ 谷合ひの里しらじらと明け初めて な
脈の速さの雪はふりつむ 景
大鍋にぼるしちの湯気立ち昇り を
初点前には銀鼠を着て 泉
打ち揃ふ堺商人花の宴 季
帆のはためきの音のうららか 雄
起首:2019年12月 1日(日)
満尾:2019年12月20日(金)
捌き:ゆかり
長き夜の韃靼人の踊りかな りゑ
後の月にはのちのしづかさ 三島
とりどりに拾ふ橡の実などありて 詠犬
私語の聞こえる教壇にたつ ハク
それつぽく髪を乱して白手套 西生
風力計も折れんばかりに 天気
ウ 欠航を告げられてゐる不倫行 真人
袖すり合ふも蛸壺の縁 ゑ
暗がりに眠る天文科学館 島
いちご畑にジョン・レノン立つ 犬
Dm-E-C-Eと弾きつづけ ク
だんだんずれるネクタイの柄 生
縊死の木の下に始まる名推理 気
力学を説く前歯欠けたる 人
トム猫がジェリーを攫ふ月朧 ゑ
知らない町を歩くお彼岸 島
花冷えの永楽銭の穴四角 犬
聞かず顔にて長煙管とり ク
ナオ 土曜日の綺麗な靴の逃亡者 生
グエンカオキの曾孫と名乗る 気
怪しげな投資顧問の事務所にて 人
ゼムクリップは炎の匂ひ ゑ
手作りの詩集の並ぶ棚二段 島
インスタグラムに朗読の声 犬
新郎は落研にゐたこともあり ク
首を振るたび違ふ横顔 生
路地裏を鈴の音よぎる今朝の秋 気
暑中見舞を出しそびれたる 人
宙返りして見る月も丸かつた ゑ
崩れ簗ある三半規管 島
ナウ 中年の独り言聞く夜の坂 犬
酒のにほひが雪を降らせる ク
人柄で保たれてゐる鯛焼屋 生
瀬戸内海を航(わた)る佐保姫 気
水軍の裔ともどもに花の宴 人
風船乗りは西へ東へ ゑ
起首:2019年10月13日(日)
満尾:2019年10月28日(月)
自然薯の自我肥大たる湿度かな なむ
生きて腸まで届く山かけ ゆかり
満月を横切る貨車は音たてて れいこ
ページの焼けた擬声語辞典 槇
ポラロイドカメラが彼をひらきだす トキ
雲形定規に物語あり 洋子
ウ 眉太く描いて待ちをる鶴女房 槐
見るなと云へど閨の特権 む
入道のこんなところに手が墨が り
天守閣から下す釣り糸 こ
えきそばに芒種の月をトッピング 槇
つゆの向うへ平泳ぎする キ
手も足も銀紙のやう夢のやう 子
薄氷を踏む新品の靴 槐
ゆかしくもなにやら蕗の薹立ちて む
三十路つどへる午後ののどけさ り
大阪のおつちやんたちと花の下 こ
胸ポケットに仁丹のある 槇
ナオ 凍て星の粒のひとつをJAXA指す キ
ブラックホールといふ叙情詩 子
約束の二時にどこでもドアの前 槐
いやだおとなになりかけてゐる む
つぎつぎに猫が木となる猫の森 り
つんつんしたり丸くなつたり こ
モヒカンをおつ立てたまま死ぬつもり 槇
等身大のパンが焼かれて キ
なま肉に塩胡椒ふるタイミング 子
CMあけてすいつちよの鳴く 槐
箱に箱積んで月光裡の路肩 む
木犀の香のことに激しき り
ナウ 乾杯のグラスにどなたかの指紋 こ
金田一来て頭を掻いて 槇
あはゆきの音韻としてあらはるる キ
鳥帰る日のふるき木の椅子 子
花守もふらと加わる花の昼 槐
羽化する蝶のごとくまどろむ む
起首:2019年10月16日(水)
満尾:2019年10月27日(日)
かなかなや他人の住んでゐる生家 陽子
釣瓶落しへ豆腐屋の笛 ゆかり
月光を物理学者のすり抜けて あんこ
狂ひ咲きをる病院の庭 媚庵
洟水に似たる氷柱をへし折らん 銀河
夜毎天狗は高尾の森で 月犬
ウ 語部の塩辛声のしみわたる 令
南の島の白き砂浜 子
たつぷりと塗つてと言ひて横たはり り
背骨をなぞるこそばゆき指 こ
三味線の皮は猫だと教へられ 庵
蝙蝠の影よぎる月面 河
書棚には伯爵領といふ句集 犬
前へ倣へで靴の形に 令
下萌を駆けてくる半ズボンたち 子
げにかぐはしき佐保姫のひだ り
風光るテラスヘスパゲティふたつ こ
文庫の中也詩集に落花 庵
ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏 河
旅の役者と帰る燕と 犬
菊酒を唐草文の風呂敷に 令
押し入れの中息をひそめる 子
熱戦はタイブレークに突入す り
ボールボーイのいつも後ろ手 こ
賭け金をまた倍にする女連れ 庵
燃える朱色に香を焚きしめ 河
老画伯襖に描く龍虎の図 犬
竹林のなか小径小暗し 令
月光に関守石のひとつあり 子
抜き差しならぬままに長き夜 り
ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる こ
グランドピアノ弾く人の影 庵
抽斗にハズキルーペを置き忘れ 河
嗚呼恍惚の牡丹雪降る 犬
雨傘をレフ板として花万朶 令
整列の前よぎるてふてふ 子
起首:2019年 8月13日(火)
満尾:2019年 9月 5日(木)
捌き:ゆかり
つけて名を呼ぶことのなき金魚かな 火尖
レゴの欠片を拾ふ明易 ゆかり
てつぺんを翔ちたる翼ぶ厚くて 佳世子
野ねずみひそむ秋草の原 ゆらぎ
姉妹して月のひかりをすがめたる 鯖男
口頭試問迫るうそ寒 正博
ウ 滑舌の酷さを買はれ金庫番 七
カションカションと逃げるロボット 尖
着ぐるみをはづして鯛焼をもらひ り
障子を破る猫の慕し 子
絶え絶えに声はつづいて鄙の宿 ぎ
別れの朝のコーヒーにニド 男
ナオミちやんの足を縛つたまま放つ 博
ストリ-トビュ-に怪し人影 七
しわくちやの紙伸しをる朧月 尖
現代貨幣理論うららか り
花衣かぶせ亡骸若返る 子
ロバのパン屋の歌に反応 ぎ
ナオ 関取のひとりふたりと目を覚ます 男
雨の匂ひのまじる潮騒 博
あまやかな夕べを過ぐる舌触り 七
手のひらぢかに何を書いたの 尖
心臓へそのまま続く運命線 り
暗きところにじつと神馬は 子
旧臘の酔ひに若水沁み渡る ぎ
選挙に落ちて枯木みつめる 男
メンタルのバリアフリーが必要に 博
白い廊下のどこまでも夢 七
ジオラマの湾へ月光鉄路へも 尖
フィリピン沖にふたつ台風 り
ナウ 洪鐘は座禅のかたち紅葉山 子
鳩サブレーで虫押さへする ぎ
めぐりきてドゴール帽につもる雪 男
修正写真何を消そうか 博
濃きうすき光と影をあそび花 七
遠足同士すれ違ひたる 尖
起首:2019年 7月13日(土)
満尾:2019年 7月28日(日)
捌き:ゆかり
日傘さし一個の点となりにけり 茱萸
遠近法で続く万緑 ゆかり
地球儀の海のあたりに耳あてて 小奈生
やがて安らぐしろい神経 四羽
自転車で遅番に行く月明り 媚庵
薄原より魔女の飛び立ち 恵
ウ カプセルに遺骨を詰める暮の秋 桐子
等身大のベティ・デイヴィス 萸
値札ある水族館を冷やかして り
降れば降るほど逢ひたいと言ふ 生
夜の土に二人で下りて落書きし 羽
ヘリコプターがよぎる寒空 庵
着膨れて左手重きサイコガン 恵
夜が足りない緞帳の裏 子
初凪の岬を一周廻る猿 茱
灯台しろくうららかにして り
バザールのベルベル人と花の下 生
おほきな箱に蝶がびつしり 羽
ナオ モニターに迷彩服のやくみつる 庵
渋谷スクランブル交差点 恵
うつすらと火薬匂ひて月涼し 子
赤い貼絵にいそしむ画伯 萸
ポルシェとかボリシェヴィキとか走り抜け り
微調整する景気判断 生
裏切の宇宙怪獣やるせなし 羽
じゃがたら芋を大鍋に煮る 庵
水澄みて洗濯板の硬き音 恵
こめかみの奥きつつきの来て 子
体幹は洞となり果て後の月 萸
遠めがねにて見やる行くすゑ り
ナウ しんしんと雪の音聞くカテドラル 生
二十世紀の冬帽傾ぐ 羽
蒼穹に輪を描くブルーインパルス 庵
赤で記せし恋猫の地図 恵
あしあとにひかり生まれる花の朝 子
みんな似てゐる四月の子ども 萸
起首:2019年 5月27日(月)
満尾:2019年 6月20日(木)
捌き:ゆかり