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2006年4月13日木曜日

正木浩一句集(その2)

 ややトリッキーな句を中心に紹介したいと思います。俳人ならではの発想というか、俳人でない人に共感を得られるのかよく分からない種類の句ばかりを、あえて選びました。

稲光水に隙間のなかりけり   正木浩一
鳶の乗る空気重たき二月尽
柚の香の柚をはなるる真闇かな
凍りては水をはなるる水面あり
早蕨を映さぬまでに水疾し
春暁の薄闇に眼を泛かべたる
水の面と知らず落花の動くまで
風と水触れて水の香白菖蒲
永遠の静止のごとく滝懸る
明滅の滅を力に蛍飛ぶ
羅におくれて動くからだかな
急がねばならず黄落夜を降る
岬山の鳶を揚げたる淑気かな

 このような句を、いかにもな類型と考えるか、しびれるかは人によって異なると思いますが、私はだんぜん後者です。

覚えある香ほのか花の雨上がる ゆかり

2006年4月11日火曜日

正木浩一句集

 ひとつ前の記事で「発句というものは、作者の名前や伝記とともに理解されるべきものなのでしょうか。五七五という世界最短小の韻文詩形は、そんなに脆弱なものなのでしょうか」と書きましたが、『正木浩一句集』(深夜叢書社)を読みました。
 正木浩一は正木ゆう子の兄で平成四年没。この句集は正木ゆう子編の遺句集ということになるわけですが、飾り気のないボール紙の函に収められた序文も跋文もない句集は、句がすべてを語るために周到に用意された最良の体裁といえるでしょう。

  陽子
寒き世に泪そなへて生れ来し 正木浩一



夜の雨の花終はらせる音しづか ゆかり