2009年8月15日土曜日

正木ゆう子『夏至』

 正木ゆう子さんの第四句集『夏至』(春秋社)。ときとしてユーモラスに、ときとしてとんでもなくマクロに、作者の視点は自在です。 いかにも正木ゆう子ワールドというボキャブラリーとしては進化、微生物、人類、公転といったところでしょうか。それらの言葉が俳句の中で息づくさまを見てみましょう。

進化してさびしき体泳ぐなり   正木ゆう子

つるつるの肌を持った人間の深い性を感じます。

一枚の朴葉の下の微生物

 朴落葉を詠んだ句は史上さまざまありますが、それをめくって微生物を詠んだ句はかつてあったのでしょうか。生態系へのまなざしを感じます。

つかのまの人類に星老いけらし

 星の生命に比べれば、ほんとうに人類などつかのまのものに過ぎません。

公転に遅れじと春の大気かな

 本句集の挙句。中八にたるませたところが句の内容とマッチしていて、とてもマクロな把握でありながらユーモラスに仕上がっていて、さすがです。

秋といふ天の轆轤を見てしまふ ゆかり

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