『月の茗荷』は鳥居真里子の第二句集。昨今、どんどん伸びる犬のひもがおおいに普及していますが、鳥居真里子のことばの操り方は、喩えて言うならその犬のひものような感じです。長いひもの先で、ことばたちにやりたいようにやらせているようです。
嗽するたびに近づく銀河かな 鳥居真里子
姉ふたり闇のたぐひの福笑
蛇は川わたし日傘に入ります
野菊咲く豆電球のおいしさう
人体と空のからくり桃咲けり
老人を逆さに見ればあやめかな
地球とは硝子の柩つばめ来る
こころいま朧膨れとなりにけり
本能と直結しているはずの「おいしさう」の対象は「豆電球」だし、「こころ」は「朧膨れ」という造語によって形容されています。この巧妙に作者から遠く配置されたテキストのシュールさは、なんなのでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿