こしのゆみこの作品世界は重層構造をなしていて、まず下地としてこの作者ならではの豪快さ、こだわらなさというのがあるような気がします。
藤棚の下に自転車ごと入る こしのゆみこ
聖五月鳥の真ん真ん中歩く
片恋のキャベツおかわりする自由
家族ならビーチパラソル支えなさい
帰省して母の草履でゆく海辺
風の家シャツパンツシャツパンツ干す
火事あかくどんどん腹の減ってくる
借りている革ジャンパーのポケットに飴
千年の桜の中に手を入れる
このような基本的性格の上に、家族愛やファンタジーが雑多に混在しているおかしな世界、よじれた世界が『コイツァンの猫』なのだと思います。
追記
句集冒頭の三句は次のように並んでいます。
一階に母二階時々緑雨かな
藤棚の下に自転車ごと入る
父上京幸福の空豆さげて
自転車の句は、のっけから母と父のあいだに強引に割り込むように配置されているのです。
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