集中、お父上を詠んだ句が胸を打ちます。
立てず聞けず食へず話せず父の冬 正木ゆう子
死のひかり充ちてゆく父寒昴
早蕨を起こさぬやうに終の息
寒巌のひと生の寡黙通しけり
死もどこか寒き抽象男とは
甲種合格てふ骨片や忘れ雪
骨拾ふ冬三日月の弧を思ひ
骨に骨積むや遥かな雪崩音
「ひと生」は「ひとよ」と読むのでしょうか。一連の句群からは、立派な体格を持ち寡黙に一生を全うした人物像がせり上がってきます。そんな中で「死もどこか寒き抽象男とは」は、この作者ならではの句と感じます。
本の帯に「俳句は世界とつながる装置」と書かれているのですが、このようにして俳人は世界につながっているのだと思います。
追記「早蕨を起こさぬやうに終の息」ですが、「早蕨を映さぬまでに水疾し 正木浩一」と彼方で響き合っているような気がします。
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