2018年9月4日火曜日

五吟歌仙 夏至の陽の巻

   夏至の陽に光りてスカイツリーかな   媚庵
    十間橋を浴衣の少女        ゆかり
   おもむろに極彩色のボール立て     りゑ
    絶好調でも不調でもなく       銀河
   雲去りて繊月の空静まりぬ        霞
    夜学に詰まる音読のこゑ        庵
ウ  銃痕のことにはふれず秋灯        り
    ためつすがめつ減らない煙草      ゑ
   裘着せかけらるる波止場街        河
    化けて出るのもこの日が最後      霞
   シネコンで「万引き家族」二回観る    庵
    四百円を割るデカンター        り
   蛸壺をうをにとられて梅雨の月      ゑ
    明石大橋わたるまでよと        河
   スクロールしてゐる人の死について    霞
    絵踏の日時高札にあり         庵
   目にものを云はせ花筏の遡上       り
    イチゴミルクを奢ろぢやないか     ゑ
ナオ 台風のコース気づかふ始発駅       河
    地図は燃やして秋遍路ゆく       霞
   小結と自称し兄の草相撲         庵
    骨折見舞のハムに巻紐         り
   年忘れ数へるごとに人の増え       ゑ
    ケーブルカーを揺らすやまかぜ     河
   私しか見ぬ両足の爪を塗り        霞
    タンゴ奏でるジュークボックス     庵
   猫の目の合はせ鏡をワープして      り
    涼も新たな茶を酌み交はす       ゑ
   月下敲門渋 舌下推飴甘         河
    彼岸花踏み虚しく往きて        霞
ナウ 驟雨過ぎ雨の匂ひの村となる       庵
    注意を払ふ葉書投函          り
   鼻歌のあるじは庫裏の大和尚       ゑ
    降りねばならぬ石段の数        河
   見上げれば花の蕾もゆつくりと      霞
    色はうつりて百千鳥鳴く        庵


起首:2018年06月21日
満尾:2018年09月04日
捌き:ゆかり