思ひ出すための一日や桜餅 西生
やがてひかりにとける囀 三島
風船の轍をのこす雲もなし 秀雄
抜かれぬやうに立ち漕ぎをして なな
衛星の影よぎり行く大き月 今朝
留守番電話に蜩のこゑ れいこ
ウ 踊り出す案山子次世代ミュージック 茱萸
硝子の靴の踵を踏んで 生
砕け散る糸し糸しと言ふ心 島
木質化する君の俤 雄
飲み切つてしまふスコッチウヰスキー な
心臓三つ脳は九つ 朝
新しいパパと見てゐる夏の月 こ
水中眼鏡外さぬままに 萸
透きとほる巨きな傘の下にゐて 生
臨終を待つたそがれの国 島
青い鼻血が逆巻く川の花明り 雄
ゆつくり啜る椀より浅蜊 な
ナオ ひたすらにおむつを換へて春暮るゝ 朝
ござるござると村の長老 こ
アカウント端末ごとに使ひ分け 萸
時給の順に送る履歴書 生
煤逃の初体験は十五歳 島
をしを商鞅高次構造 雄
立ち読みの本にみごとな染みをつけ な
定刻に発つ深夜特急 朝
助手席を退いてくれない轡虫 こ
乃木忌終日ラジオを聴いて 萸
砂浜をムーンライトの尖りをる な
作りものめくカクテルの青 島
ナウ 鳥籠の耳にしづかな小米雪 雄
新聞王の捨てられぬ橇 生
セントラル・パークを抜けて蚤の市 朝
海を夢見て自鳴琴鳴る こ
追ふやうに逃れるやうに花筏 萸
つばめ飛び交ふ地図要らぬ町 な
起首:2021年04月12日(火)
満尾:2021年05月01日(水)
捌き:三島ゆかり
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