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音楽のしみだしてくる焚火かな りゑ
雪ともまがふ白きかなしみ ゆかり
パラフィンは三角形に畳まれて 苑を
若葉風ごと食らふドーナツ くらげを
月光の集まつてゐる鬼の牙 恵
ひよどり鳴いて献血車来る らくだ
ウ うすく濃く葡萄酒醸す闇の奧 冬泉
戦乙女の巻髪を梳く ゑ
上目にて見据ゑ鏡に下ろす布 り
どこでもドアの開く音がする 苑
流刑地を寒濤しぶく果の果 く
ミックスジュース一気に飲みて 恵
宝湯の口開けはみな顔なじみ だ
火山をのぞむ月涼しかれ 泉
思い出のありとはなしに遠眼鏡 ゑ
ぶんぶん回すマイクスタンド り
散り急ぐ花は阿修羅の姿して 苑
むなしく揺るる雨後のふらここ く
ナオ 新入生代表として立つクララ 恵
四ヶ国語を操るといふ だ
テーブルに塔のカードがめくられて 泉
つづら折りなる集積回路 ゑ
手袋をしながら無駄口を叩く り
時とはなにか言うてみたまへ 苑
中腹にアンモナイトの化石出て く
三兄弟は醤油塗れに 恵
銚子まで来ても残暑の揺るぎなし だ
分銅減らす秋の天秤 泉
名月のどこかに署名あるといふ ゑ
大道具からくべる打ち上げ り
ナウ 泉には弾けるやうな笑ひ声 苑
互ひ違ひにジェラートの色 く
一瞬で競歩の選手通り過ぐ 恵
足の裏から冴返りたる だ
ひきこもる花をしとねの九十九髪 泉
東風に誘はれ深むチェロの音 く
起首:2020年11月29日(日)
満尾:2020年12月17日(木)
捌き:ゆかり
鯊天の朱字に惹かれて引戸かな とつかあ太
黙々と呑む関取の背 ゆかり
犬が行き荷車が行き秋深み 媚庵
通りすがりにふれる楠 桐子
羚羊ら裸婦の如きに怠けたる 四羽
ぐるぐる回る磁石の針が ゆらぎ
指し示す立待月の三陰交 葉月
十日の菊を出窓に飾る 槐
ウ 色鳥に紛れ散髪してゐたり 火尖
アニメ声なるラジオDJ 太
大陸の帽子でガラス越しに笑む り
復員兵は瀬島龍三 庵
満水のダム湖にねむる綴じ暦 子
陸の蛸ならジルバが得意 羽
枕絵の女となつてまなこ閉づ ぎ
甘き誘ひの開く口元 月
ガルウイングのベンツの抱く朧月 槐
野焼き帰りの貌の男等 尖
花守と呼ばるるにまだ若すぎて 太
戦を知らぬ長き髪の毛 り
噴く汗にざくざくと行く羅生門 庵
顎までずらすガーゼのマスク 子
二オ 大統領咳のはづみにポチッとな 羽
「いいね」ひとつに怯む総書記 ぎ
兄上と呼ばれ背筋を駆けるもの 月
ろくろつ首の抜衣紋へと 槐
折紙の余りに折紙の匂ひ 尖
風やはらかく揺るるカーテン 太
木洩れ日に窓といふ窓開け放ち り
三年生が吹くリコーダー 庵
ありふれた写真を流れ出るボレロ 子
裸足のままで走る国道 羽
御百度のさなかに猿が乱入し ぎ
バッハ会長夢見るやうに 月
聖火台に聖火こほらせ月のあを 槐
皆がやさしく磨く猟銃 尖
二ウ 均等に切り分くることなら得意 太
巴里から届く手紙数通 り
黄砂降り不破写真館閉館す 庵
蒲公英色の初代ビートル 子
丸眼鏡拭いて悪役春惜しむ 羽
やがて薬の効いてくる頃 ぎ
身に着ける学校指定の網タイツ 月
負けてばかりのジュースじやんけん 槐
月もろき夜のプールに忍び込み 尖
尾崎豊は友の後輩 太
恐るべきアンチエージングの秘術 り
ステンドグラスごしののどけさ 庵
花ひとひら水のひかりへためらはず 子
風炎の日の谷の泣き声 羽
三オ 誰ぞやの服の掛けある落し角 太
鉄の掟と鋼の心 月
母に憑くおキツネ様を燻し出し 庵
以後千年は水を打つべし 尖
さざれ石巌と為らずタピオカに 羽
右に左にかはす急坂 り
疎ましき求婚者たち髯の伸び ぎ
実習生の握るカミソリ 子
かほの傷かくしつつゆく朝帰り 槐
チャージ不足に開かぬ改札 太
またしても取り残されて涼あらた 月
運動会のピストルの音 庵
月といふ響きは硬き天地に 尖
ソイレントグリーンで乾杯 羽
三ウ 近未来小説よりも長生きす り
南柯の残夢蟻の巣に蟻 ぎ
一人また一人と欠ける列にゐる 子
ボーイズラブも老け専にして 槐
親方に手とり教はるかんな掛け 太
釘を使はず柱を組んで 月
切妻の屋根の彼方に鳥帰る 庵
穀雨の紙を選る鳩居堂 尖
メーデーの月が綺麗ですね社長 羽
元の名で呼ぶ酔ひの横丁 り
竹輪麩がおでんにないと不機嫌に ぎ
念のため遠ざけるデンモク 子
花の夜をKEEP OUTのテープの黄 槐
駆除班を待つすゞめ蜂の巣 太
ナオ 風船を馬鹿正直に追跡す 月
ハーポ・マルクス笑ひとまらず 庵
現役のブラウン管の虹の痕 尖
シルクロードの蛇に涙は 羽
神々の民そしてまた神の民 り
黄昏てゆくグローバリズム ぎ
いち早くユーチューバーになる詩人 子
姿は見えず猫の鳴きたり 槐
吸殻のあれよと貯まる駐車場 太
六道辿り五衰するひと 月
小雨降る午すぎの野に野菊咲く 庵
ゆんゆと撓む蜻蛉の空 尖
母さんは帰つて来ない昼の月 羽
同級生の用を足す音 り
ナウ 焼却炉に雪は吹き込む燃え上がる ぎ
ひだり手ばかり失くす手袋 子
ポケットにつきたるままのしつけ糸 槐
何を買ふにも妻の見立てで 太
納豆を練る速度にて世は流れ 月
占星術師錬金術師 庵
始まりの違ふ花ざかりの交差 尖
チヨコレイトと響く永日 羽
起首:2020年 9月24日(木)
満尾:2020年10月28日(水)
捌き:ゆかり
日がうごく囮の鳥のかたむきに トキ
曼珠沙華咲く人の世の果て ゆかり
からすうり持つ迷ひ子に懐かれし 鯖男
オルゴール鳴り続く有明 あんこ
夏痩の野球評論家の語る 知昭
パイナップルの芯の抜き方 れいこ
どこまでも入れ子になつてゐるマスク キ
すぐ行かないと凍つちやふから 男
終電に忘れてしまふズブロッカ あ
般若心経口ずさみたる 昭
北斎の波かと思ふ伯母がゐて れ
オーロラとして転送さるる キ
松過ぎてモデムの音を夢に聞く り
二十年ほど笑つてすごし 男
花冷の鎖骨に揺るるターコイズ あ
名残の雪のすぐ消ゆる白 昭
たまごぼうろのふはとおぼろ夜 れ
起首:2020年 9月14日(月)
満尾:2020年 9月21日(月)
捌き:ゆかり
尾長来て人を見下ろす残暑かな 晶子
誰も知らない色のなき風 ゆかり
夕月の声はひゆうひゆう出づるらん 茱萸
メタセコイアの湖の道 令
遠雷に分別らしき犬の顔 小奈生
ルーシー語るフェミニズム論 由季
ウ 神無月襖開ければオノ・ヨーコ 玉簾
火をつけたのはあんたぢやないの 子
吹き消せぬほどのらふそく立ち並び り
密に集ひて百物語 萸
怖いもの見たさのやうに好きになり 令
愛のかたちはアシンメトリー 生
豆雛の並べられたる違ひ棚 季
漆器に積もる黄砂払ひて 簾
龍天に登り易げな雲に月 子
首都高のごと蝌蚪の紐伸び り
廃線をたぐり寄せれば花の宴 萸
記憶の底のペンギン村に 令
ナオ 飛躍的認知の歪みかもしれず 生
階段下りるだまし絵の中 季
トリッパのトマト煮のあるレストラン 簾
諜報部員のグレーのコート 子
解読に時間のかかる懸想文 り
地層の奥の衣ずれを追ふ 萸
根の国に通ずるための井戸替を 令
蜘蛛の巣払ふ葬儀看板 生
配達と掛持ちをするアルバイト 季
遠回りしてこほろぎを聴く 簾
ゆつくりと地球の昇る月の海 子
億千万の曼珠沙華燃ゆ り
ナウ 歌姫の生命線は長く伸び 萸
母郷はるかに雪の山脈 令
ほろ酔ひの温泉卓球ほどほどに 生
弥勒菩薩の手首の角度 季
猫の背に上着に連れて帰る花 簾
あをあをと積む蓬餅の香 子
起首:2020年 8月10日(月)
満尾:2020年 8月26日(水)
捌き:ゆかり
恢復の友の笑顔や薔薇垣根 月犬
髪の長さが及ぶ蜘蛛の囲 ゆかり
潮の香と日暮が軒に満ちてきて 苑を
そろりそろりと硯を洗ふ らくだ
有明はゆふべの夢の行き止まり ゆらぎ
案山子のシャツの破けたる襟 なな
ウ 美術室繁忙文化祭間近 なむ
浮浪雲めく烟草のけむり 犬
お代はりと桃井かおりの声色で り
豊葦原をいちにち歩く を
五本指ソックスどこも在庫なし だ
斎戒沐浴能面を打つ ぎ
だんだんと冬月硬くなつてゆき な
火鉢跨いだまんま動けず む
暗がりで魔女が煎じる惚れ薬 犬
呪ひにも似て片思ひ濃し り
薄墨の花の吐息を漏らすらむ を
紙風船はたたまれてをり だ
ナオ 逃げ水をキックボードで追ふ子ども ぎ
母の名前を繰り返し言ふ な
焼跡のかしこにしろきもの噴いて む
地獄の釜の蓋すこし開く 犬
舌おほき男をずつと待つてゐる り
小劇場の浮かぶ宵闇 を
スカウトの名刺もらひて有頂天 だ
霙まじりの滝壺に入る ぎ
NTTドコモのスマホ解約し な
色鳥のあの一羽捨てます む
分校の窓白白と月あかり 犬
どしどし集ふ夜寒のけもの り
ナウ 吹けよ風呼べよ嵐と咆哮す を
テンポを決めるドラムスティック だ
半生は舟を持たないままに過ぎ ぎ
空を読む目にあをの滲みて な
地上波の涯をはらはら花の雨 む
燕来る日のただいまのこゑ 犬
起首:2020年 6月 5日(金)
満尾:2020年 6月20日(土)
捌き:ゆかり