岡田由季『犬の眉』(現代俳句協会)の続きで、「アフリカ」。
大人のみ部屋に残れる三日かな
正月に親戚が集まると、いとこ同士の子どもばかりで外へ出て行って遊びに興じたりすることがある。それを回想するのではなく、小学生の少女・岡田由季として詠む。前章の「悴んでドッジボールに生き残る」も、あるいは「目覚めては金魚の居場所確かむる」も、小学生の少女・岡田由季が息づいている。
犬笛の音域に垂れ凌霄花
凌霄花は校庭のネットなどかなり高いところに垂れているのを見かけるが、それを「犬笛の音域に垂れ」と詠めるのは愛犬家の岡田由季ならではだろう。犬と言えば「敷物のやうな犬ゐる海の家」も楽しい。
秋蝶もゐてセンターの守備範囲
野球の句では他に「どくだみや一塁ベース踏みなほす」「かなかなや攻守の選手すれ違ふ」「ブルペンの音聞こえ来るクロッカス」「敵側のスタンドにゐてかき氷」があり、どの句もじつにリアリティがある。もしかすると、少女・岡田由季は男子に混じって実際にグラウンドに立っていたのではないだろうか。だとすると句集の最初の章が「一塁ベース」だったのは深い必然性があってのことだったのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿