しばらく待望の田島健一第一句集『ただならぬぽ』(ふらんす堂)について書く。
(著者からご恵送頂きました。ありがとうございます。)
本の厚さからすると三百句くらい収録かと思われるが、章立てが非常に細かく、四十七章に及ぶ。俳句の読者だけを想定した章立てではないのだろう。題のついた一編の現代詩に相当するものが章で、詩の一行一行にあたるものがそれぞれの句であるようでもあり、そうでないようでもあり、一句一句の作風、章内の並べ方はひとこと自在に尽きる。
思い当たったのはビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の中の一曲、ジョン・レノンが書いた「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」だ。サーカスを題材にした歌詞の中、「それにもちろん/馬のヘンリーがワルツを踊ります」(片岡義男訳)とともに曲調が一変、三拍子に転じるのだが、その音響がカラフルを極める(とりわけ1:53以降の後奏)。プロデューサーのジョージ・マーティンは、数々の音色の録音された磁気テープを同じ長さに切ってランダムにつなぎ合わせたというが、田島健一のこの句集は、たまらなくそれを思い出させる。『ただならぬぽ』とは、同じ長さの俳句をランダムにつなぎ合わせた、めくるめく世界なのだ。
なお、石寒太氏の序文は川端茅舎の句集に寄せた虚子の序文(写真)を踏まえている。
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