岡田由季『犬の眉』(現代俳句協会)の続きで、「ネコ科」。
隣り合ふ家の朝顔似てゐたり
二つの絵が左右にあって「この絵には違うところが何ヶ所あるでしょう」というのがあるが、岡田由季の句の世界も、よく知っているものがなにか違うものに感じられ始めたり、逆に違うものだったはずのものが同じに見え始めたりするようなところがある。掲句、「そりゃ朝顔なんだから似てるでしょう」と片付けられない佇まいを感じる。
天高し待つときの犬三角に
私自身は犬を飼ったことがないのだが、これは「おすわり」の姿勢だろう。広がる秋空の下、「三角」とまで極端に単純化された不動の犬の従順さ、飼い主への信頼が胸を打つ。
ギリシャ語をふたつ覚えて秋の航
「はい」と「いいえ」だろうかとか、「こんにちは」と「ありがとう」だろうかとか、読者の方で想像がふくらむように仕組まれた「ふたつ」がいい。
川沿ひは歌はずにゆく聖歌隊
なんだか現金な聖歌隊である。
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