高架から地下鉄に乗る淑気かな ゆかり
春めくやいきなり路地を曲がる人
赤鬼とならずや桜蘂降れり
堀を切り船宿のあり鉄線花
軒下の彼方泰山木咲けり
そもそもは葉の色にして七変化
鰹塚あかく燃えたる黴雨入かな
引潮を急ぎ大川さみだるる
船長は雨合羽なり隅田川
広場から街の始まる大南風
堀終はるところに葭やさみだるる
さみだれや鳩の群れをる軒浅し
佃煮の鰻は高しさみだるる
大鳥居穴守稲荷さみだるる
軌道呑みモノレール来る梅雨晴間
軌道吐きモノレール去る夕薄暑
悪玉のはびこる腸や夕薄暑
魚屋の水浸しなる夜涼かな
夕焼や昔たばこの大看板
まづ沈む空母発つ機や阿波踊
夜の秋のラミパスルルル不二夫逝く
束ね髪通す穴ある夏帽子
飛ぶものは揚羽ばかりの山路かな
あらはなる実ぞ恥づかしき玉紫陽花
秋暑き麓の音のまづは犬
蟹のゐる水の臭ひや秋暑し
北島の号外もらふ残暑かな
落蝉は夜の舗道を打つてをり
あめつちのはじめに鰯雲ありき
ももんがのたひらをめざす秋の猫
角部屋の秋思は崖のごとく落つ
八分の一ほど人魚うろこ雲
がばがばとへうたん島の通貨かな
株分けの約束をする秋麗
足跡に降る新しき木の実かな
秋の日の暗がりこはき水族館
大胆な狛犬のある師走かな
クリスマス略し不動の商店街
猫ふとる生態系や冬木立
百態の幹や裸木立ち並ぶ
めらめらと焚火の中の漫画かな
五周目の罰の少女や冬木立
歯車で動く小春の遊園地
胃薬を飲む文豪や寒に入る
鏡文字時計や総合感冒剤
夜の川を渡る抗生物質かな
母のごと気管支拡張剤やさし
痰を切る包丁欲しき師走かな
ペンギンの行列ペンギンばかりなり
山眠る闇なるものに連なつて
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