2008年12月31日水曜日

三島ゆかり二千八年五十句

高架から地下鉄に乗る淑気かな   ゆかり
春めくやいきなり路地を曲がる人
赤鬼とならずや桜蘂降れり
堀を切り船宿のあり鉄線花
軒下の彼方泰山木咲けり
そもそもは葉の色にして七変化
鰹塚あかく燃えたる黴雨入かな
引潮を急ぎ大川さみだるる
船長は雨合羽なり隅田川
広場から街の始まる大南風
堀終はるところに葭やさみだるる
さみだれや鳩の群れをる軒浅し
佃煮の鰻は高しさみだるる
大鳥居穴守稲荷さみだるる
軌道呑みモノレール来る梅雨晴間
軌道吐きモノレール去る夕薄暑
悪玉のはびこる腸や夕薄暑
魚屋の水浸しなる夜涼かな
夕焼や昔たばこの大看板
まづ沈む空母発つ機や阿波踊
夜の秋のラミパスルルル不二夫逝く
束ね髪通す穴ある夏帽子
飛ぶものは揚羽ばかりの山路かな
あらはなる実ぞ恥づかしき玉紫陽花
秋暑き麓の音のまづは犬
蟹のゐる水の臭ひや秋暑し
北島の号外もらふ残暑かな
落蝉は夜の舗道を打つてをり
あめつちのはじめに鰯雲ありき
ももんがのたひらをめざす秋の猫
角部屋の秋思は崖のごとく落つ
八分の一ほど人魚うろこ雲
がばがばとへうたん島の通貨かな
株分けの約束をする秋麗
足跡に降る新しき木の実かな
秋の日の暗がりこはき水族館
大胆な狛犬のある師走かな
クリスマス略し不動の商店街
猫ふとる生態系や冬木立
百態の幹や裸木立ち並ぶ
めらめらと焚火の中の漫画かな
五周目の罰の少女や冬木立
歯車で動く小春の遊園地
胃薬を飲む文豪や寒に入る
鏡文字時計や総合感冒剤
夜の川を渡る抗生物質かな
母のごと気管支拡張剤やさし
痰を切る包丁欲しき師走かな
ペンギンの行列ペンギンばかりなり
山眠る闇なるものに連なつて

0 件のコメント:

コメントを投稿