2012年3月27日火曜日

七吟人面歌仙・小面の巻

掲示板で巻いていた歌仙が満尾。

   小面の眼に野火は走りけり      令
    鼻腔におはす春の遺伝子    ゆかり
      皺ほそく鶯餅のつままれて     ぐみ
    うちとけて舌なめらかとなり   銀河
   泣きぼくろ会で予約の月見舟    なむ
    カメラ目線で檸檬を持てば     篠
ウ  口紅を塗つて案山子も人気者   らくだ
    逢ふためすこし額髪を切る     令
   まなうらの冬日さみしく抱きあふ   り
    カイゼル髭の老師見舞ひて     み
   しっとりと美肌手入れに秘訣あり   河
    したり顔その顔がでつかい     む
   銅像の目が死んでゐる夏の月     篠
    鯖買ふ時は鰓をよく見て      だ
   水難の相で水には近寄らず      令
    悪事働く頬白仮面         り
   花の下どくろ埋まると伝へ聞き    み
    涙ぬぐへば顕つ蜃気楼       河
ナオ 描く眉がどんどん太く魚津駅     む
    おちよぼ口から噂広まり      篠
   襟足も刷毛でぬられて舞妓はん    だ
    顔見世に見る祇園一力       令
   鯉口をもてあそびつつ黙しをり    り
    不服にあらずしもぶくれです    み
   超えかねて高き鼻梁のハードルを   河
    アンジェリーナと名乗るくちびる  む
   天からの声は眉間に降りてくる    篠
    こめかみを経てリンパ循環     だ
   十六夜のフェイスブックかmixiか   令
    蚯蚓鳴くとき舌巻く画像      り
ナウ 共喰ひのおかめうどんを夜食とす   み
    耳に親しきおつちやんの笛     河
   掛声を誘ふ写楽の大首絵       む
    横目遣へば光るてふてふ      篠
   そばかすを星座に見立て花篝     だ
    舞ひて謡ひて能面の笑み      み

 

起首:2012年 3月11日(日)
満尾:2012年 3月27日(火)
捌き:ゆかり

2012年3月16日金曜日

五吟歌仙・ゾンビの巻

掲示板で巻いていた歌仙が満尾。

      ゾンビ来て海鼠食うたかたづねけり   まにょん
    はかなき身にも春遠からじ       ゆかり
   それからの一とせの空くもりゐて       令
    ビルの谷間に育つ無花果         苑を
   宵月へひらく店の名さまざまに       なむ
    松茸飯は匂ひ嗅ぐのみ           ん
ウ  三枚におろしたやうな恋の果て        り
    ちぎりてのちのアンニュイな部屋      令
   波音の仏蘭西映画から寄せて         を
    遅々と進まぬ地下の行列          む
   皇帝に仕へし兵馬俑あまた          ん
    さても今宵の満漢全席           り
   噴水の池に月光揺れてをり          令
    ひまはり畑に戦禍の記憶          を
   いつ来ても歯科にヘンリー・マンシーニ    む
    銀のハートを首に垂らせば         ん
   だんだんと花の妖気に眠くなり        り
    壬生念仏の割れる土器           令
ナオ てふてふにふれなば毀れ易からむ       を
    ドア越しに聞く第一志望          む
   講堂の礎石に火炎瓶の痕           ん
    長靴を踏むしなやかなもの         り
   ヨガの姉豹のポーズで息とめる        令
    三千丈の仙人の髭             を
   亡命と称して娑婆へ墜落す          む
    ピサの斜塔に人影見えて          ん
   字で終はる無声映画にやや酔へり       り
    残る暑さの路地裏の町           令
   見上ぐれば物干台に昼の月          を
    二科展に出す油彩百号           む
ナウ アメ横に叩き売られしチョコありて      ん
    失敗作を食べるちちはは          り
   山よりも海よりもよき掘炬燵         令

    仔猫きよとんと此の世を眺め        を
   地震の夜の花爛々と光をり          ん
    海市吐き出すなまぐさの口         む
 


起首:2012年 2月24日(金)
満尾:2012年 3月16日(金)
捌き:ゆかり

2012年3月6日火曜日

九吟歌仙・臘梅の巻

掲示板で巻いていた歌仙が満尾。

   臘梅や天空に聞く水の音       まにょん
    いまだ覚めざる地中に蛙       ゆかり
   耕耘機末黒野をゆき末野ゆき      あとり
    卒論にする中原中也         六番町
   満月をのせて空中ぶらんこは       天気
    絹のリボンを解く足首          恵
ウ  階段を上る少女を待ちつづけ       苑を
    若紫なる君の名を知る         ぐみ
   結婚を前提として付き合つて      らくだ
    思ひ出すこし詰めたトランク       ん
   酔ひつぶれ枕にしては固すぎる       ゆ
    昨日も今日も冬瓜炊いたん        あ
   土星より月を眺むる太田君         町
    議事進行の脇で螻蛄鳴く         気
   電車賃貸してくれろとせがまれて      恵
    屋号かたぶく駅前旅館          を
   真つすぐな幹若くして花満開        み
    散りては集ふ蝌蚪に大小         だ
ナオ 吉原の門をくぐれば春の雨         ん
    濡れの具合を指で確かめ         ゆ
   二階から紙飛行機は南へ          あ
    スッチーの売るグッチとシャネル     町
   猪肉の店とぶらへばココとあり       気
    昼は炬燵で寝る吸血鬼          恵
   首筋の疵を隠すに襟を立て         を
    鼻濁音聴く別れのきはに         あ
   おろおろと金子光晴新橋(ポンヌフ)を   町
    廣之進なら記録すいすい         み
   月光をCD-ROMに焼き付けて      だ
    紅葉映せば玻璃は震へる         ん
ナウ ゆふぐれに猫を抱き上げ冬近し       ゆ
    招かれしゆゑ踏み入る小部屋       気
   たまねぎの女王黒船見給ふと        み

    涙の味は苦くて甘い           を
   マラソンは名残の花を眺めつつ       恵
    生まれし川へのぼる若鮎         だ


起首:2012年 2月 9日(木)
満尾:2012年 3月 6日(火)
捌き:ゆかり