2016年12月14日水曜日

(13) 打率を上げる

 今回はいい句を作るのではなく駄目な句を排除することを、ロボットなりに考えたい。

 今のところ、季語だろうがただの名詞だろうが意味判断せずに対等に現れる衝突の可笑しさを狙っている訳だが、いくらなんでもこれは駄目だろうという句ができることがある。

  初雪の雨の鏡を見つめけり   はいだんくん
  しづかなる小春の夜に遅れをり


 どちらもだいたい同じ理由で駄目なのだが、「初雪の雨」も「小春の夜」も衝突を面白がる以前にあり得ない。天気に違う天気をぶつけてはいけないし、明らかに昼を詠んだ「小春」に「夜」をぶつけてはいけないのだ。

 どうしたものか。大抵の歳時記には時候、天文、地理、生活、行事、動物、植物といったカテゴリーがあるが、大ざっぱすぎて役に立たない。「小春」は時候だが、時候だというだけでは「小春の夜」を排除できない。「冬の星」は天文だが、明らかに夜だ。雨の日に「山眠る」とは詠まないだろう。季語に限らずある種の語は、裏情報として天気や時間帯を明確に特定しているのだ。であれば、timeとかweatherとかの属性を季語や名詞に持たせて、その特定のものに対しては「昼」とか「雨」とかあらかじめ設定するしかないだろう。

 連句では自他場という考え方がある。前句が自分を詠んだものなら付句は他人を詠む。前句が他人を詠んだものなら付句は場所を詠む。このようにずらして付けることにより衝突を避けるという知恵だが、それをここでも応用しよう。天気を特定する語が出たら、もう天気の語は出さない。時間帯を特定する語が出たらもう時間帯を特定する語を出さない。季語と名詞間だけでなく、名詞間でもそれができれば、極端な話、「昼の夜」みたいなものは出現しなくなり、ぐんと打率は向上するはずだ。

 また、そのような属性を保持していれば、発展型として時刻や天気を外部から取得することにより、まさに今の時刻や天気に対して即吟することができるのではないか。なんだか無駄にすごい。

(『俳壇』2017年1月号(本阿弥書店)初出)

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