2017年6月14日水曜日

(19)俳句ソフト不正使用問題

 二〇一六年に世を騒がせた将棋ソフト不正使用問題は、疑いをかけられ出場停止処分を受けた棋士に将棋連盟が慰謝料を払うことで双方が合意し和解した、と今年五月二十四日に発表があった。まずはめでたしであるが、技術の進化が第二、第三の同種の問題を引き起こすであろうことは想像に難くない。俳句界とて同様であろう。
 さて、我らが「はいだんくん」を実作支援に使用しようと考えたとき、これはどうにも使い勝手がよくない。ユーザインターフェースが「次の一句」ボタンしかないのがなんとも物足りないのだ。やはり、ユーザが自分で季語や特定の語句を入力でき、それを用いた句を返すようなものでないと、実作支援には使えないだろう。いくつかの改善策を考えてみる。

季語 「はいだんくん」の季語は、現在日付をもとにその日使えるものをランダムに返している。二十四節気や忌日も登録されているので、今日から小暑か、とか今日は重信忌か、とか気づくのには役に立つが、数ヶ月後に発行される原稿の季節には合わない。デフォルトは現在日付で構わないが、日付はユーザが指定できるようにしたいではないか。

語彙 句会で出題される兼題/席題をそのまま指定してロボットに作らせたいではないか。余談ながらスマホの角川合本俳句歳時記アプリでは全文検索という機能があり、季語だけでなく検索ができる。例えば「告ぐ」で検索すると、〈癒え告ぐるごとく北窓開きけり 佐藤博美〉〈鰯雲人に告ぐべきことならず 加藤楸邨〉がヒットする。これは紙の歳時記ではできない便利な機能である。

差し替え ロボットが作った句が、大体いいんだけどここがねえ、という場合、大体いいところは固定して、ここがねえというところを部分的に差し替えたい。

複数案表示 デジカメでブラケット撮影というのがあり、露出とかホワイトバランスとかISOとかを少しずつ変えて、一回のシャッター押下で複数枚の写真を撮ることができる。であれば、「はいだんくん」でも季語を上五、中七、下五に置いた三案を表示すると
か、季語だけ異なる三案を表示するとかあると、ユーザがそうそう、これこれと選べるではないか。

 このくらい便利になれば実作支援に役立つことだろう。ところで、俳句のことをよく知らない人に、俳句には歳時記というものがあって、そこには季語の意味と例句が載っていて、俳人は歳時記を引きながら俳句を作るのだという説明をしたら、「え、それってカンニングじゃないの」と言われた。そこか…。


(『俳壇』2017年7月号(本阿弥書店)初出)

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