立冬の引込線の夕陽かな 媚庵
紙屑のごと舞ふ都鳥 ゆかり
流れ着くものをあれこれ選りわけて 銀河
郵便配達人の憂鬱 りゑ
自転車を追ひかけてくる超満月 庵
ひとさし指で交はす稲妻 り
ウ ゐつづけて鳴くかなかなを愛ほしむ 河
紫烟が匂ふ舶来煙草 ゑ
私家版を詩人歌人に発送す 庵
限定読者27番 り
勝ち馬の汗拭いてをる昼の月 河
雲ははぐれて方南町へ ゑ
地図になき国の浪漫を語り飽き 庵
長押のうへの竹のものさし り
お師匠のさすが乱れのなき針目 河
ついて良いのは嘘だけだらう ゑ
無礼講ゆるされてゐる花見船 庵
朧の河へ投げる駅長 り
ナオ 女子寮にわけても柳絮飛び交ひぬ ゑ
アルバムに貼る写真一葉 河
寄せ書きのギプスにライバルの名前 り
自己新記録まであと二秒 庵
わうごんで舌を鎮めてゐる立夏 ゑ
焼菓子かをり午後のお茶会 河
やる気ない帽子屋に雨降り始め り
稽古帰りの相撲取にも 庵
ボンネット叩いて猫を追ひ出しぬ ゑ
いひわけといふことにあらねど 河
缶詰のやうにしたたり月のぼる り
夜学にまなぶ微分積分 庵
ナウ まへを行くかの火祭の火男よ ゑ
どぜう髭かと殿の御下問 河
やはらかい時計が開ける障子窓 り
ゆりかごに猫ねむる遅き日 庵
黄桜もしろも眞露も花のなか ゑ
とけてほどけて淡雪の水 河
起首:2017年11月08日
満尾:2017年12月24日
捌き:ゆかり
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