2017年12月29日金曜日

四吟歌仙 引込線の巻

   立冬の引込線の夕陽かな        媚庵
    紙屑のごと舞ふ都鳥        ゆかり
   流れ着くものをあれこれ選りわけて   銀河
    郵便配達人の憂鬱          りゑ
   自転車を追ひかけてくる超満月      庵
    ひとさし指で交はす稲妻        り
ウ  ゐつづけて鳴くかなかなを愛ほしむ    河
    紫烟が匂ふ舶来煙草          ゑ
   私家版を詩人歌人に発送す        庵
    限定読者27番            り
   勝ち馬の汗拭いてをる昼の月       河
    雲ははぐれて方南町へ         ゑ
   地図になき国の浪漫を語り飽き      庵
    長押のうへの竹のものさし       り
   お師匠のさすが乱れのなき針目      河
    ついて良いのは嘘だけだらう      ゑ
   無礼講ゆるされてゐる花見船       庵
    朧の河へ投げる駅長          り
ナオ 女子寮にわけても柳絮飛び交ひぬ     ゑ
    アルバムに貼る写真一葉        河
   寄せ書きのギプスにライバルの名前    り
    自己新記録まであと二秒        庵
   わうごんで舌を鎮めてゐる立夏      ゑ
    焼菓子かをり午後のお茶会       河
   やる気ない帽子屋に雨降り始め      り
    稽古帰りの相撲取にも         庵
   ボンネット叩いて猫を追ひ出しぬ     ゑ
    いひわけといふことにあらねど     河
   缶詰のやうにしたたり月のぼる      り
    夜学にまなぶ微分積分         庵
ナウ まへを行くかの火祭の火男よ       ゑ
    どぜう髭かと殿の御下問        河
   やはらかい時計が開ける障子窓      り
    ゆりかごに猫ねむる遅き日       庵
   黄桜もしろも眞露も花のなか       ゑ
    とけてほどけて淡雪の水        河
 
起首:2017年11月08日
満尾:2017年12月24日
捌き:ゆかり

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