自然薯の自我肥大たる湿度かな なむ
生きて腸まで届く山かけ ゆかり
満月を横切る貨車は音たてて れいこ
ページの焼けた擬声語辞典 槇
ポラロイドカメラが彼をひらきだす トキ
雲形定規に物語あり 洋子
ウ 眉太く描いて待ちをる鶴女房 槐
見るなと云へど閨の特権 む
入道のこんなところに手が墨が り
天守閣から下す釣り糸 こ
えきそばに芒種の月をトッピング 槇
つゆの向うへ平泳ぎする キ
手も足も銀紙のやう夢のやう 子
薄氷を踏む新品の靴 槐
ゆかしくもなにやら蕗の薹立ちて む
三十路つどへる午後ののどけさ り
大阪のおつちやんたちと花の下 こ
胸ポケットに仁丹のある 槇
ナオ 凍て星の粒のひとつをJAXA指す キ
ブラックホールといふ叙情詩 子
約束の二時にどこでもドアの前 槐
いやだおとなになりかけてゐる む
つぎつぎに猫が木となる猫の森 り
つんつんしたり丸くなつたり こ
モヒカンをおつ立てたまま死ぬつもり 槇
等身大のパンが焼かれて キ
なま肉に塩胡椒ふるタイミング 子
CMあけてすいつちよの鳴く 槐
箱に箱積んで月光裡の路肩 む
木犀の香のことに激しき り
ナウ 乾杯のグラスにどなたかの指紋 こ
金田一来て頭を掻いて 槇
あはゆきの音韻としてあらはるる キ
鳥帰る日のふるき木の椅子 子
花守もふらと加わる花の昼 槐
羽化する蝶のごとくまどろむ む
起首:2019年10月16日(水)
満尾:2019年10月27日(日)
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