2019年10月27日日曜日

七吟歌仙 自然薯の巻

   自然薯の自我肥大たる湿度かな    なむ
    生きて腸まで届く山かけ     ゆかり
   満月を横切る貨車は音たてて    れいこ
    ページの焼けた擬声語辞典      槇
   ポラロイドカメラが彼をひらきだす  トキ
    雲形定規に物語あり        洋子
ウ  眉太く描いて待ちをる鶴女房      槐
    見るなと云へど閨の特権       む
   入道のこんなところに手が墨が     り
    天守閣から下す釣り糸        こ
   えきそばに芒種の月をトッピング    槇
    つゆの向うへ平泳ぎする       キ
   手も足も銀紙のやう夢のやう      子
    薄氷を踏む新品の靴         槐
   ゆかしくもなにやら蕗の薹立ちて    む
    三十路つどへる午後ののどけさ    り
   大阪のおつちやんたちと花の下     こ
    胸ポケットに仁丹のある       槇
ナオ 凍て星の粒のひとつをJAXA指す   キ
    ブラックホールといふ叙情詩     子
   約束の二時にどこでもドアの前     槐
    いやだおとなになりかけてゐる    む
   つぎつぎに猫が木となる猫の森     り
    つんつんしたり丸くなつたり     こ
   モヒカンをおつ立てたまま死ぬつもり  槇
    等身大のパンが焼かれて       キ
   なま肉に塩胡椒ふるタイミング     子
    CMあけてすいつちよの鳴く     槐
   箱に箱積んで月光裡の路肩       む
    木犀の香のことに激しき       り
ナウ 乾杯のグラスにどなたかの指紋     こ
    金田一来て頭を掻いて        槇
   あはゆきの音韻としてあらはるる    キ
    鳥帰る日のふるき木の椅子      子
   花守もふらと加わる花の昼       槐
    羽化する蝶のごとくまどろむ     む


起首:2019年10月16日(水)
満尾:2019年10月27日(日)

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