笹舟のゆくへや今朝の冬野川 冬泉
子より大きな息白き犬 ゆかり
サーカスの始まり告げる声のして ぽぽな
笑顔を保つ軟体の美女 由季
月淡くしてコルカタの道をゆく 夜景
霧を換喩とまちがへながら 秀雄
ウ 冷まじきものに国立競技場 苑を
聖母子像に火薬匂へり 泉
はぐれたら外人墓地で落合はん り
薄き耳朶やはらかく噛み な
パン種を伸ばし捩ぢるもモテ仕草 季
アンモナイトを夢に置き去り 景
のむ水の腹の地層を疾くとほる 雄
逆三角は正義のしるし を
麦踏んで定家が仰ぐ明月に 泉
仮名遣ひよきうぐひすのゐて り
姿見の奥の奥まで花盛 な
テクマクマヤコン楊貴妃になれ 季
ナオ 片恋の涙を獏に舐めさせて 景
切手溢るる電話ボックス 雄
空色の硝子の床の下は街 を
終末旅行はレーション持つて 泉
目が合へば隠るる二つ結ひ揺るる り
プールサイドは午後のきらめき な
牧神のひとの部分が凍えゐる 季
巨大な熊が高く跳ぶイヴ 景
星間の点線すでにうすけむり 雄
月宮殿に箏を奏でて を
波斯青磁烏扇の実をこぼす 泉
酒乱の父の舐める柚子味噌 り
ナウ 谷合ひの里しらじらと明け初めて な
脈の速さの雪はふりつむ 景
大鍋にぼるしちの湯気立ち昇り を
初点前には銀鼠を着て 泉
打ち揃ふ堺商人花の宴 季
帆のはためきの音のうららか 雄
起首:2019年12月 1日(日)
満尾:2019年12月20日(金)
捌き:ゆかり
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