2020年2月20日木曜日

七吟歌仙 音階の巻

   音階の下りてゆきたる寒暮かな    あんこ

    左手が打つ底冷えの底       ゆかり

   島影のやうやう白む舷に      くらげを

    翼ふるはす名も知らぬ鳥       れい

   月めざし友とジョギングするコース   遊凪

    早稲の香ゆるく揺れ淀みをり      梓

ウ  円墳のやうに盛られし菊膾       陽子

    やはらかき目の誘ふ次の間       こ

   かたかたと百の端末動きをり       り

    順に奥より始まる脱皮         を

   新月の梔子の香と大麻の香        い

    結んだ髪の浴衣連れにて        凪

   ここへきて遺書がどうのと揉めてゐる   梓

    シルデナフィルを過剰摂取し      子

   冴返る山と思へば君の腹         こ

    うす霞みをる注連縄と垂        り

   花すでに此の世の崎を昏うして      を

    バスは走れり街に帰らむ        い

ナオ 見学は灘界隈の酒の蔵          凪

    するする喉を滑る蘭鋳         梓

   国芳の化け猫つひに出てきたり      子

    果てなく続く闇の板塀         こ

   べからずの鳥居とべしのおみくじと    り

    取替へてみんふた心もて        を

   男装の姫に恋する内侍たち        い

    佳人の園に響く鈴の音         凪

   野に萩はこぼれて重き日の残り      梓

    バーレッスンの手すり冷ややか     子

   林檎食む同じ口もて秘密告ぐ       こ

    昼月透ける鰯雲なり          り

ナウ 旅いつもつづきのやうに始まりて     を

    降りつむ雪に記憶蔵はる        い

   パソコンのメモリ容量拡大し       凪

    しやつくりのまま過ごす閏日      梓

   豊かなる胸を隠せし花ごろも       子

    春夕焼へ深くお辞儀を         こ


起首:2020年 1月24日(金)

満尾:2020年 2月20日(木)

捌き:ゆかり


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