2018年12月28日金曜日

七吟歌仙 立冬の巻


   立冬を祝つて雨の夜明かな        なな
    落葉のゆゑと揺るる足どり      ゆかり
   砂粒は砂の尻尾をこぼれゐて       銀河
    箪笥の鐶の錆の鈍色          媚庵
   月を待つ少年棋士は十五歳        正博
    もみぢにかける指のひとすぢ       な
ウ  ジッパーを下ろせば溢れ出す夜長      り
    海女とからんだ子蛸大蛸         河
   自由律俳句を壁に書き散らし        庵
    爆撃のごとヘヴィーメタルは     ぽぽな
   皮すべて剥いてしまつた人参に       な
    喉元過ぎて合はす帳尻          り
   燦然と向日葵のある昼の月         河
    展覧会に並び疲れて           庵
   灸すゆるのは三里より踝か         令
    紙風船を膨らましつつ          な
   意のままに大気操る飛花落花        り
    海市にゐると瓶詰めの文         河
ナオ 遠縁に夢野久作・伴宙太          庵
    デザートに蜜たつぷりかかる       令
   送受信できない機械握りしめ        な
    ピンチとともに来るコマーシャル     り
   オレオレと急かされてゐるちよつと待て   河
    瘴気ただよふ路地の底冷え        庵
   帽子屋と兔とともにお茶を飲み       令
    名前を未だ覚えてをらず         な
   骰子の目の十倍を支払つて         り
    身を捨ててこそ浮かぶ遊行忌       河
   万博の予定地に差す後の月         庵
    搭乗のとき霧の濃くなり         令
ナウ さつきまで雪に遊びし秋田犬        な
    火を焚いてゐる色白の母         り
   遠巻きの輪をほどかずば夜が明ける     河
    お地蔵さんの赤よだれかけ        庵
   杣道をたどりて花の三角点         令
    釈迦の生まれし日の鰯缶         な

起首:2018年11月07日
満尾:2018年12月23日
捌き:ゆかり

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