2006年12月31日日曜日

三島ゆかり二千六年五十句

落ちるとき目方さだまる椿かな       三島ゆかり
半身の線をあらはに涅槃西風           
大脳のここがキッチン鳥雲に
植木算もちゐグラジオラス植ゑる
機械あり春のうれひに発達す
春天は金魚すくひのごと白し
春昼のしづかにまはる光りもの
はじまりは遺伝子により花曇
この国を花冷えといふ気団かな
予報では花曇りのち花の雨
覚えある香ほのか花の雨上がる
花冷えを隔てて書架の並びをり
上下巻同じく厚き花の夜
クローンのただ待つてゐる夕桜
帯電する桜並木や遅刻坂
吹き溜まる花の屑さへあたたかし
散りどきの花は裾より青みたり
はじまりは此処にあらずや飛花しきり
夜の雨の花終はらせる音しづか
カーテンに影上下して四月かな
神棚のやうな巣箱となりにけり
はつなつの風の名前を考へる
びつしりと揺るるものなき五月闇
葉桜といふもはばかる黒き幹
からつぽのものみな丸き黴雨かな
〆切のやうな黒南風刻々と
鳴くまでの黒き日和や鳩時計
梅雨の日のせせらぎの音滝の音
まどかなるクリームソーダ隙間なし
のぼり来る線香花火のしづくかな
頬杖の肘を払はれ向日葵落つ
火にかけて医食同源秋に入る
政治部の窓に朝顔すましをり
美しき肌一枚の秋めけり
脱げばもうスカートでなき夜長かな
乱れ飛ぶテレビの電波赤とんぼ
合鍵を持つまでもなき鰯雲
彼に訊くアイドルのこと鰯雲
シャンプーを言ひ当てられる良夜かな
長月や前掛け重きレントゲン
注射器を持たぬ手で持つ秋の腕
細胞に悪の組織や夜半の秋
朗読の真空管の灯りけり
器にも穴のあるなし秋黴雨
この山と空がことり舎小鳥来る
恋人の水晶体で占へり
小鳥来るカフェのメニューのイタリア語
秋深しフローチャートに韓国語
小春日や花のかたちの角砂糖
極月や首都に日陰の有り余る

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