2011年3月18日金曜日

脇起し七吟歌仙・遠くよりの巻

掲示板で巻いていた歌仙が満尾。


   遠くより二月の海のうねりかな  桂信子
    冴返りたる美しき数式     ゆかり
   ひむがしに春の結び目ほどかれて  苑を
    雲の上行く窓のひとびと     ぐみ
   猫に髭馬に睫毛の月の宴      銀河
    到来ものの南瓜ごろりと      令
ウ  冷ややかに午前零時の継母は   うさぎ
    くるぶしの汗ひとに拭はせ   あとり
   にこやかに取材をかはす上半身    ゆ
    白昼堂々名画を盗む        を
   エルガーの行進曲で式挙げて     み
    べそかきながらやつと一年     河
   寒柝は月の裏側までとどく      令
    蝙蝠傘のフロイト博士       ぎ
   天鵞絨の緑の丘へ続くソファ     あ
    どんどんどんどん撞球の玉     ゆ
   花ふぶく夜は湖となる町に住み    を
    朝陽に染まる白蝶の群れ      み
ナオ 韃靼の春を指したる帆のこころ    河
    ときじくの夢違観音        令
   てのひらに書き足したるは何の線   ぎ
    逆光の鳥まばらに並ぶ       あ
   土偶から土偶生まるる北の国     ゆ
    女スパイは微笑を浮かべ      を
   髪切るも想ひの丈の絶ちがたく    み
    寵愛ふかきお腹様とも       河
   明日はあす今日はけふとて繭籠る   令
    絹ごし豆腐ばかり商ひ       ぎ
   薔薇窓のくづれてのちの月の暈    あ
    森に夢みる蔦の聖堂        ゆ
ナウ 大陸を蝗の群の飛び止まず      を
    羽うしなひし雪の降り積む     み
   このところずつとロングのコート着て 河
    硝子越しなる笙や篳篥       令
   篝火を吸ひ寄せ飽かぬ里の花     ぎ
    春の河口の波のきらきら      あ


起首:2011年 2月 8日(火)
満尾:2011年 3月16日(水)

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