2016年1月14日木曜日

(2) 二月は春の季語なのか

 ロボットで季語を扱おうという観点から歳時記を眺めていると、あらためて品詞のこととか暦のこととか人間なら気にしないようなことに気づく。

 ロボットなので「ララララや」とか「リリリかな」のララララやリリリに字数の合った季語をランダムに流し込むことを考えるわけだが、まずそこで行き詰まる。歳時記に載っている季語はざっと八割方くらいは名詞だと思うが、そこに断りもなく「春浅し」のような形容詞や「冴返る」のような動詞が混在している。「や」や「かな」はその前が動詞でもさまになるが、「ルルルルの」のルルルルにはさすがに動詞は入れられない。「春立つの」にはできないのだ。そんな訳で名詞、動詞、形容詞などを分類し出すと、日常生活ではまず出会わないような「霾(つちふる)」とか「雪しまく」とか品詞すらよく分からないものに出くわしては途方に暮れる。

 また、現在日付から本日使える季語を取得しようなんてことを考えると、暦の問題に直面する。歳時記の中では二十四節気と新暦、旧暦が混在する。大抵の歳時記で【春】を引くと、立春から立夏の前日まで、みたいな説明がある。この立春とか立夏とかは、二十四節気に由来する。二十四節気は純粋な太陽暦なので、うるう年のある新暦とは、四年に一日程度の誤差がある。だから立春を引くと(二月四日ごろ)というふうに「ごろ」という表記がある。これに対し旧暦はややこしい。月の運行をベースにすると一年が太陽暦にくらべ約十一日短くなってしまうことから、二十四節気との折り合いにおいてずれが拡大すると閏月を置いて補正した。そんな補正量の大きさなので陰暦の睦月とか如月とかは、新暦の何月何日ごろから何月何日ごろまでという記載がない。

 さて、ロボットの話なのであった。では立春から立夏の前日までを「春」として、二十四節気ベースで二月四日から五月五日までの期間、歳時記にある春の季語を使えるとしようとすると、あれ? 春の季語には「二月」がある。では二月一日から二月三日までは「二月」を春の季語として詠んではいけないのか。ロボットはここで悩んで自爆したくなるのだった。

 立春の鏡は夢となりにけり はいだんくん

(『俳壇』2016年2月号(本阿弥書店)初出)

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