2017年9月14日木曜日

(22)節という概念を導入する

 またまた「はいだんくん」を大改造した。これまでその日使える季語をまずひとつ決定して、その音数の季語を使う句型を選択していたのだが、逆にした。単純に句型をひとつ決定してから、その音数のその日使える季語を選択するようにした。従来季語から決めるようにしていたのは、「勤労感謝の日」とか「建国記念の日」とか変な長さの季語をフィーチャーしようとしたら、季語から決めた方がいいだろうという考え方だったのだが、このままだと季語とその他との互換性の点で決定的に発展性がないだろうと考えを改めた。その上で芭蕉に立ち返ろう。

  古池や蛙飛びこむ水の音 芭蕉

 この句は主語+述語という普通の文章のかたちではない。俳句独特のかたちである。上五に名詞節、下五に名詞節、そして中七に下五にかかる連体修飾節がある。大ざっぱにふたつの名詞節で構成されているので、先に現れる方を首名詞節、最後に現れる方を尾名詞節と仮称することにする。また「や」は切れ字ではあるがほぼ首名詞に従属して現れることから首名詞節に含むものとする。また切れ字に限らず「の」「は」「が」などの格助詞とも互換だろう。
 同様にこの句には現れないものの「かな」はほぼ尾名詞に従属して現れることから、尾名詞節に含むものとする。中七はこの句では「三音の季語+動詞連体形」となっているが、全体として連体修飾節でありさえすればその中は、「六音の季語+の」とか「三音の季語+のごとき」とかいろいろ代替は可能である。さらに句全体でどこか一箇所に季語が現れることが制御できるのであれば、すべての名詞と季語は互換である。同じように切れ字も句型ではなくロジックの側の制御により、句全体でどこか一箇所に切れ字が現れることにすればよい。
 こんなふうにして先に季語を決めることをやめたことにより、季語を節の中に置いて名詞と互換に扱うことが可能になり、〈古池や蛙飛びこむ水の音〉という単一の句型からロボットは以下のようなバリエーションを生み出すに至った。

  放課後や桃に遅れるお下げ髪    はいだんくん
  色鳥のいつもあふるるふたりかな
  少年の蜩らしき耳の穴
  稲妻の一浪といふ泣きぼくろ
  空気椅子秋の灯しのお下げ髪
  蟋蟀の行き過ぎてゐる重みかな



(『俳壇』2017年10月号(本阿弥書店)初出) 

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