2018年11月24日土曜日

山本掌『月球儀』を読む(3)

 次の章は「禽獣図譜」。実在の動物に限らず、鵺、迦陵頻伽、一角獣、火喰獣(サラマンドル)なども登場する。猿嫁、猿王あたりはちょっと分からない。出典があるのかも知れないし、その辺の人間社会のことなのかも知れない。また「青き馬」「群青の馬」「青き鷹」「青麦」「青水無月」「青海亀」と、青への固執もしくは偏愛も感じられる。そんな中、鮎の四句がただならぬ飛躍を見せる。

  若鮎の骨美しき宇宙塵     掌
  寵童を殺めし信長鮎を食う
  鮎食べて天球の半径を測る
  月球儀鮎の動悸のおくれけり


 なんと四句のうち三句は天体との取り合わせとなっている。年魚の異名が示す通り鮎は一年で一生を終えるので、そういう意味では惑星の周期に思いを馳せる引き金となっているのかも知れない。句集のタイトルの由来であろう月球儀の句、「動悸」が「同期」の同音異義語であることに注目しておこう。俳句の世界では同音異義語など注目に値しないことかも知れないが、この作者は朔太郎の写真とコラボするような人なので、油断ならないのだ。

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