寒月のふくらみてゆく家路かな あんこ
おでんの種のふたり分強 ゆかり
わたつみのそこひに泡の生まるらん 登貴
残暑の港町の教会 媚庵
十六夜のガラスの欠片集めゐて なな
記憶にはなきかりがねのこゑ こ
ウ 針飛びの華麗なる大円舞曲 り
目薬を買ふ仲のおいらん 貴
三畳にレースの下着吊るされて 庵
紙袋よりサボテンの棘 な
祝と呪の右は同じと囁かれ こ
火星人めく妹の脚 り
赤貝の紐に塗り箸先細き 貴
一息に飲むタンポポの酒 庵
山羊の毛と羊の毛刈る少年の な
影の大きく伸びる夕さり こ
燭の火の揺れて花嫁しづしづと り
涼しき縁に書きかけの経 貴
ナオ 薩摩琵琶さらふ念者のにほひたつ 庵
ほどきし帯の柄の逆しま な
くちびるへ人差し指のやはらかく こ
スクイズせよのサイン見落とす り
ステージに残されてゐる銀の靴 貴
馬賊が走る満州の原 庵
降るたびに雪の礫を作りたる な
いろはにほへと乳の溢れて こ
干草を飛び越え犬の胴長し り
野分吹き過ぎ静寂の街 貴
月光の石畳踏みゆく軍靴 庵
案山子の服に岩波文庫 な
ナウ 窓際の席と決めたる日曜日 こ
つぎつぎ開くゆふぐれの傘 り
ゴム長の五歳にもどる夢を見て 貴
テレビ画面に魔女の鉤鼻 庵
千年の花の間近にパイプ椅子 な
春たけなはの宴のはじまり こ
起首:2019年 1月21日(月)
満尾:2019年 2月13日(水)
捌き:ゆかり
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