春雨や剥けば魚肉のやはらかさ 凱
折檻のごと恋猫のこゑ ゆかり
朧夜の香のたちのぼる水辺にて 青猫
乗り捨てられた四輪駆動 媚庵
畑まで残月を背に向かひたり 遊凪
息吹きかけて磨く紅玉 裕美
ウ よそいきで急ぐ芒の波の道 玉簾
湘南までぢや話し足りない 凱
生命の起源の棒の如きもの り
シーラカンスとなるまで眠る 猫
聞きたての都市伝説を反芻し 庵
今でも残る巴里の地下街 凪
大長編映画の果てて月涼し 美
人肌ほどの合歓の木の下 簾
地元では代打の神様と呼ばれ 凱
野次将軍も四年契約 り
言の葉はやや脂じみ花の雨 猫
酸素ボンベの重き遅き日 庵
ナオ 蝌蚪の紐バケツに入れて児ら帰る 凪
あらゆるものに名前をつけて 美
玉葱を刻む前から泣いてをり 簾
ミラーボールに乗つて銀座へ 凱
裏筋の画廊でお湯が沸いてゐる り
夕日にまぎれ一角獣が 猫
男装の麗人の襟巻の紺 庵
腕を組もうと誘ふウインク 凪
疑問符を投げ掛け合つて長き夜 美
夢の中でも揺るる撫子 簾
霧の辺をローソク足がついてきて 凱
ぽつかり上がる終値と月 り
ナウ 白地図を開けば青き風ばかり 猫
バンガローから女声合唱 庵
車椅子で小径をつたふ老夫婦 凪
お守りのごと風船を持つ 美
ひとひらの花が睫毛に降る日暮 簾
ぶらんこ越しに遠浅の街 凱
起首:2019年 2月19日(火)
満尾:2019年 3月11日(月)
捌き:ゆかり
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