宙に日のさざなみの浮く若葉かな 一実
金管の音を運ぶ薫風 三島
バンダナを載せれば鼻の大きくて 西生
砂に水脈引くひとこぶらくだ くらげを
イヤフォンをはづし降り立つ月の庭 れいこ
骨にも見えるもみぢ葉の色 義之
ウ 踊子の闇ゆるやかに翻し あんこ
背と背合はせて汗を合はせて 実
折り紙のどうぶつふたつ横たはる 島
何か出てゐる単三電池 生
まちがへて枯野に歩くピエロをり を
行方知れずの兄に凍月 れ
逃亡者逃げる相手が分からない 之
倫敦橋に雨のそぼ降る あ
秒針の進みの淀むゆふべ来て 実
跳んでは跨ぐ歯車の部屋 島
ポイントを貯めれば花の咲くらしく 生
五十五倍の春嵐来よ を
ナオ 草餅のにほひをさせて姑が れ
お手玉をする双子の姉妹 之
歩くたび夢の廊下は長くなり あ
戦争の顔やはら見えたる 実
膝上の猫あやしつつ意を決す 島
ラジオネームは準未成年 生
甲板に雪積んで往ぬ烏賊漁船 を
みやげに貰ふ一澤帆布 れ
なつかしき北野祭の初デート 之
囁きあへる黄昏の列 あ
月影のまどかに満ちて海を引き 実
夜長を走る作曲のペン 島
ナウ 敗荷は秘密のやうにゆるやかに 生
逝き残りたる吾とぞ思ふ を
休日のバス乗り継いで古書店へ れ
夢判断を道標とし 之
鳥居よりあふれてゐたる花の雲 あ
紋白蝶は空の高みへ 実
起首 二〇一九年五月 三日(金)
満尾 二〇一九年五月一六日(木)
捌き 三島ゆかり
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