2019年5月16日木曜日

七吟歌仙 宙に日のの巻

   宙に日のさざなみの浮く若葉かな    一実
    金管の音を運ぶ薫風         三島
   バンダナを載せれば鼻の大きくて    西生
    砂に水脈引くひとこぶらくだ   くらげを
   イヤフォンをはづし降り立つ月の庭  れいこ
    骨にも見えるもみぢ葉の色      義之
ウ  踊子の闇ゆるやかに翻し       あんこ
    背と背合はせて汗を合はせて      実
   折り紙のどうぶつふたつ横たはる     島
    何か出てゐる単三電池         生
   まちがへて枯野に歩くピエロをり     を
    行方知れずの兄に凍月         れ
   逃亡者逃げる相手が分からない      之
    倫敦橋に雨のそぼ降る         あ
   秒針の進みの淀むゆふべ来て       実
    跳んでは跨ぐ歯車の部屋        島
   ポイントを貯めれば花の咲くらしく    生
    五十五倍の春嵐来よ          を
ナオ 草餅のにほひをさせて姑が        れ
    お手玉をする双子の姉妹        之
   歩くたび夢の廊下は長くなり       あ
    戦争の顔やはら見えたる        実
   膝上の猫あやしつつ意を決す       島
    ラジオネームは準未成年        生
   甲板に雪積んで往ぬ烏賊漁船       を
    みやげに貰ふ一澤帆布         れ
   なつかしき北野祭の初デート       之
    囁きあへる黄昏の列          あ
   月影のまどかに満ちて海を引き      実
    夜長を走る作曲のペン         島
ナウ 敗荷は秘密のやうにゆるやかに      生
    逝き残りたる吾とぞ思ふ        を
   休日のバス乗り継いで古書店へ      れ
    夢判断を道標とし           之
   鳥居よりあふれてゐたる花の雲      あ
    紋白蝶は空の高みへ          実


起首 二〇一九年五月 三日(金)
満尾 二〇一九年五月一六日(木)
捌き 三島ゆかり

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