実家に寄って『大岡信著作集 第一巻』を取ってきた。初期の詩集『記憶と現在』から『わが夜のいきものたち』まで九冊分を収録。
今から三十年くらい前の私は、感動した行に印をつけたり、言葉の意味を辞書から転記したりしていたので、そういうのを改めて目の当たりにするのも、タイムカプセルのふたをあけるみたいで楽しいやら恥ずかしいやら。矢野顕子のLPの帯を切ったらしきものが栞になっていたり…。
例えば、中原中也のパロディのような詩に二行、私がつけた!マーク。
うたのように2
大岡信
教室の窓にひらひら舞っているのは
あれは蝶ではありません
枯葉です
墓標の上にとまっているのは
あれは蝶ではありません
枯葉です
君と君の恋人の胸の間に飛んでいるのは
あれは蝶ではありません
枯葉です
え 雪ですか
さらさらと静かに無限に降ってくるのは
ちがいます 天に溢れた枯葉です
裸の地球も新しい衣装を着ますね
!あなたの眼にも葉脈がひろがりましたね
!夜ごとにぼくらは空の奥へ吹かれるんですね
あ あなたでしたか 昨夜ぼくを撫でていたひと
すみません 忘れてしまって
だれもかれも手足がすんなり長くなって
舞うように歩いていますね
!を含む三行、音楽で言えばブリッジのようなものだが、じつに鮮やかではないか。
0 件のコメント:
コメントを投稿