山田露結『ホーム・スウィート・ホーム』(邑書林)について、しばらく思いつくままに書きます。
薄氷を割る薄氷の中の日も 山田露結
このモチーフに集約される句が集中何句かあります。
釣瓶より盥へうつす春の月 山田露結
映りたる顔剥いてゆく林檎かな
鏡店出でて一人にもどる秋
いずれも眼に映るものがじつはただの虚像に過ぎず、それが破られたことを詠んでいます。また虚像ではありませんが、「鳥帰る絵本の空をたたみけり」も同じグループに含めてよいような気がします。
まだ破られていない虚像を虚像と知りつつ玩味している句もあります。
蝶うつる眼で見る蝶の眼にうつる 山田露結
鏡にはすべて映らず猫の恋
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