橋本多佳子は、人一倍「光」に敏感な作家だったと思います。
月光にいのち死にゆくひとと寝る 多佳子
雪原に遭ひたるひとを燈に照らす
月が照り雪原遠き駅ともる
霧を航き船晩餐の燈を惜しまず
羅針盤平らに銀河弧をなせり
燈ともして梅はうつむく花多き
春月の明るさをいひ且つともす
簾戸入れて我家のくらさ野の青さ
病み伏して夜々のいなづま身にあびる
猫歩む月光の雪かげの雪
水鳥の沼が曇りて吾くもる
いまありし日を風花の中に探す
林檎買ふ旅の足もと燈に照らされ
星空へ店より林檎あふれをり
万燈のどの一燈より消えむとす
つまづきて修二会の闇を手につかむ
ゆきすがる片戸の隙も麦の金
一ところくらきをくぐる踊の輪
いなびかり遅れて沼の光りけり
いなびかり北よりすれば北を見る
いなづまのあとにて衿をかきあはす
…
「月一輪凍湖一輪光りあふ」の絶唱も忘れられません。
(以前MIXIのコミュに書いた記事の転載)
0 件のコメント:
コメントを投稿