2010年2月3日水曜日

渋川京子『レモンの種』2

 例えばこんな句はどうだろう。
 
鳴り止まぬ耳から蝶をつまみ出す 渋川京子
末黒野やつかわぬ方の脳が鳴る

「鳴り止まぬ耳」はまだ自覚的な身体感覚にまつわる比喩として読めるが、「つかわぬ方の脳」は、というと、野焼きに呼応して、ヒトの古い部分がなにやら呼び覚まされているのであろう。「つかわぬ方の脳」という把握が、なんとも楽しいではないか。

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