「や」「かな」「けり」などの切れ字を基本とした正統派の句型の中で、句型レベルでなにか派手なことをやろうと考えたとき、まず思い浮かぶのはリフレインではないだろうか。うまく行けば、華麗な調べとともに対象を詠み上げることができる。
リフレインの名手としては、後藤比奈夫、鷹羽狩行、若い世代では山田露結あたりの名を上げることができる。中でも後藤比奈夫は最初期からリフレインのオンパレードで、ライフワークのようにしてその技法にかけていたことが分かる。何句か、雛形として句型をロボットに取り込む観点から取り上げたい。
人の世に翳ある限り花に翳 比奈夫
「翳」という名詞が二回繰り返される。リフレインとしてはシンプルなものだろう。
老に二時睡蓮に二時来てをりぬ 比奈夫
単語レベルでは「二時」という名詞が二回繰り返されているが、それだけでなく「老に二時」「睡蓮に二時」という対句表現でゆったりとした調べを獲得している。
滝道といひて坂道のみならず 比奈夫
「滝+道」「坂+道」という同じ構造の複合名詞の一部を重ねリフレインとしている。
蒐めたるフラスコにバラ展の薔薇 比奈夫
「バラ+展」という複合名詞に、そのかたわれの名詞を重ねリフレインとしている。
深秋といふは心の深むこと 比奈夫
音読する限りリフレインとはいえないが、音読みの「深秋」に対し、訓読みの「深む」を重ね、字面としてのリフレインを実現している。日本語の漢字ならではの表現だろう。
ひとことに「リフレイン」と言っても、名手の技法は多彩で奥が深い。ロボットはいつの日かその境地に達することができるのだろうか、と思うはいだんくんなのであった。
これは夢これはテレビの冬日かな はいだんくん
(『俳壇』2017年2月号(本阿弥書店)初出)
0 件のコメント:
コメントを投稿