2017年1月7日土曜日

編年体なればこその繰り返し

 広渡敬雄『間取図』(角川書店)の続きで、平成二十四年。
 広渡敬雄はこの年に角川俳句賞を受賞された。「角川俳句賞受賞作品五十句」なんて前書きがあったらどうしようと思ったが、さすがにそんな無粋なことにはならず、淡々と編年体は続く。編年体なればこその、始まりと終わりの対とか、同じ視点の繰り返しなどが読者である私の側に意識され始め興味はふくらむ。花鳥諷詠とはそういうものだ。

  呼笛の紐のくれなゐ猟期果つ
 平成二十三年の句で「おがくづに雪の匂ひや猟期来る」があり(またしても「匂ひ」だ)、それに呼応している。

  リラ冷の大使館より公用車
 平成二十三年の句で「片蔭にゐる公用車地鎮祭」がある。思えば公用車というのは至るところに出没するものだ。

  兜虫ふるさとすでに詩のごとし
 平成二十三年の句で「天牛や詩人のかほとなりて鳴く」がある。奇しくも「詩」は二句とも昆虫と取り合わされる。じつに興味深い。
 
  包帯の白の粗さや蝶の昼
 包帯の白を言うのに「粗さ」といい、蝶と取り合わせている。この蝶は紋白蝶だろうか。まさにそんな白が浮かぶ。

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