ピアニスト首深く曲げ静かなふきあげ 岡野泰輔
ビル・エヴァンスの沈潜するバラードを思います。季語なのかエモーションのほとばしりなのかを限定しないように注意深く語を選んだであろう、破調の「ふきあげ」がじつによいです。
秋の夜の指揮者の頭ずーっと観る 岡野泰輔
前句もそうなのですが、人間のかたちをした人が何かの間違いで音楽を演奏する能力を持っている不思議を、この句も濃厚に感じさせます。
蔦かずら引けば声出るピアニスト 岡野泰輔
そんな演奏家を山に連れ出し、「弾けば音出る」ではなく「引けば声出る」としてしまったわけですが、根底には演奏家であることへの不思議が鳴り響いていることでしょう。
音楽で食べようなんて思うな蚊 岡野泰輔
「思うなかれ」であればなんとも照れくさくもある説教になってしまうのですが、この突然の切断。まるで『アビーロード』のA面の終わりではないです蚊。
お別れは下校のあれを春隣 ゆかり
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