2012年1月5日木曜日

脱ぐ

セーターの脱いだかたちがすでに負け 岡野泰輔

 「かたち」がなんとも可笑しいです。脱いだセーターにふくらみやくびれがそのまま匂い立つように保存されていないと、この人は許せないのです。こんな人に負けだと言われるのは、ちょっとくやしい気がします。

さくら鯛脱いでしまえばそれほどでも 岡野泰輔

 失礼な句です。きっと脱ぐ前は「さくら色したきみが欲しいよ~」と歌っていたのです。

目の前の水着は水を脱ぐところ    岡野泰輔

 水を上がってからが水着の本領で、舐めるような視線にさらされるのだとしたら、まさに「水を脱ぐ」であって、脱ぐことに他ならないのです。これはすばらしい句です。

ぜんぶ脱ぎ氷山の一角とする ゆかり

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