渋川京子さんについては『レモンの種』(ふらんす堂)を上梓された際に書かせて頂いたので(右側のラベルからたどることができます)、そのときに触れなかった句を今回は取り上げます。
夏夕べ鏡みずから漆黒に 渋川京子
ちょっと前までは、よほど暗くなるまで電気なんかつけなかったものです。虚なのか実なのかというと虚の書き方をしているわけですが、郷愁の中の夏夕べの光の具合をとらえて過不足ありません。
月光に聡き兄から消されけり 渋川京子
これも同様に光を題材とした虚の句。「聡き兄から消されけり」のs音、k音が実に繊細で怖ろしいではありませんか。
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